零 ページ1
幼い頃、私は鬼に襲われた事がある。
確かこの出来事の少し前に姉が10歳の誕生日だったから、私が7歳の時。
月が綺麗な夜だった。蛍を見ようと、祖父と川沿いを歩いていた時に鬼が出た。
『稀血のガキだァ……!』
そう言って鬼は襲いかかってきた。
祖父も私も、武術なんて全く出来ない。
尻餅をついた私は思わずギュッと目を瞑ったが、暫くしても何の痛みもなかった。
『鬼狩り様じゃ……』
祖父の声が聞こえた。
目を開けると、私の前に男の人が立っていた。
月の光に照らされて、美しく黄金色に輝く髪。
炎を象ったような羽織。
私の家によく来る人達と同じ服。
手に持った刀。
そして、鬼は消えていた。
______嗚呼、彼が鬼を斬ったのだ。
『大丈夫か?』
と、彼は私に尋ねたが、彼の方が大丈夫そうではない傷を負っていた。
だが、私を襲った鬼に傷を負わされたのではなさそうだ。彼の頬に付いている血が乾いていた。
『鬼狩り様、儂らは藤の花の家紋の家の者です。どうぞ、うちで傷を癒やしていってください』
祖父の言葉に、鬼狩りの彼は頷いて、怪我が完治するまで私の家で過ごした。
彼は煉獄槇寿郎というらしい。
だが、祖父母も両親も『鬼狩り様』と呼んでいたから、私もそれに倣って名前で呼ぶことはなかった。
祖父母達が名前で呼ばなかったのは、その時私の家にいた鬼狩りが彼しかいなかったからだと思う。
彼は稀血について教えてくれたり、私に藤の花の香り袋をくれたりした。
稀血の私がいても家に鬼が来る事はなかったのは、家の周りや庭に藤の花が咲いているからだろう。
うちの藤は、何故か1年中花が咲いている。
祖父に訊いても『藤襲山から貰ってきた』としか答えてくれなかった。
『儂らのご先祖様にな、鬼狩り様に鬼から助けてもらった人がおる。だから儂らは鬼狩り様を精一杯もてなすんじゃ』
祖父がよく言っていた。
私自身が鬼殺隊の隊士に助けてもらってから、藤の花の家紋の家の人間としての意識が強くなった。
祖母や母に、料理、裁縫、怪我の手当ての仕方など様々な事を習った。これは姉も一緒だけれど。
そのおかげで、数年前に祖父母が他界し人手が減った今でも、以前と変わらず家を切り盛りしている。
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長篠(プロフ) - もっぴいさん» ありがとうございます!もう少ししたら続きを公開するので楽しみにしていて下さい(^^) (2019年12月2日 21時) (レス) id: dff0e36449 (このIDを非表示/違反報告)
もっぴい - 転生者ですか?とっても面白かったので評価10つけときます^_^ (2019年12月2日 21時) (レス) id: 1e3d085ec9 (このIDを非表示/違反報告)
長篠(プロフ) - 鬼滅大好き女さん» あ〜〜ありがとうございます!!すごく嬉しいです!更新頑張ります! (2019年11月25日 17時) (レス) id: dff0e36449 (このIDを非表示/違反報告)
鬼滅大好き女 - 続きが楽しみすぎる!!れんごくさんの手紙の場所で私泣いた、、、応援してます!! (2019年11月25日 16時) (レス) id: 42353d0864 (このIDを非表示/違反報告)
長篠(プロフ) - 竜胆友さん» ありがとうございます!更新頑張ります! (2019年11月20日 19時) (レス) id: dff0e36449 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長篠 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/HoMePaGe/
作成日時:2019年11月3日 10時