◎渡辺くんはいつも不機嫌

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最寄駅に着いて、家路を急いでいたら後ろから声を掛けられる。振り返ればラフな格好をしている渡辺くんの姿が。初めて私服を見るけど、渡辺くんらしくて素直にかっこいいなと思った。




渡「いつもと雰囲気違うからちょっとびっくりした」


『…そうかな、』


渡「どっか出掛けてたの？」


『う、うん。ちょっとね』




さっきまで渡辺くんの事を勝手に思い浮かべていたから少しだけ罪悪感。



…まさか本人に会うと思ってなかったから、挙動不審になってしまう。




渡「…彼氏？」


『っえ！？』


渡「…や、変な事聞いてごめん」


『……えと、彼氏は居ないです』


渡「…そっか、」


『…渡辺くんこそ、どこか行ってたの？』


渡「阿部ちゃん家。皆で勉強見てもらってた」


『そうなんだ。じゃあ、佐久間くんとかも？』


渡「うん。佐久間と涼太と、あと別のクラスの奴。ふっかも誘ったんだけどアイツ来なかったな」


『………』





さっきまで一緒に居たよ、なんて言えるわけがなく。そうなんだ、と曖昧にへらりと笑ってみる。それからは本当に他愛も無い話をして、もうすぐ学校始まるねー。なんて言ったりして。




『あ、私こっちだから』


渡「あ、」


『？、じゃあ、また学校でね？』


渡「…送ってく」


『え、だ、大丈夫だよ。本当、すぐそこだから』


渡「もう暗いし、危ないから」


『でも、』


渡「…いいから甘えろ」


『えぇ…』




ぶっきらぼうにそう言って、ずんずんと歩いて行ってしまった渡辺くんに慌てて着いていく。なんか、不機嫌？ちらっと渡辺くんを見ると、ほんのりと耳が赤いような気がして。帰り道の事はあんまり覚えていなかった。









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