◎渡辺くんはいつも不機嫌

□深澤くんと夏休み ページ30

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『ねぇ、変じゃないよね？』


弟「変じゃないんじゃない？」


『…絶対見てないじゃん、』




土曜日。本当に時間が経つのはあっという間で、何着て行こうなんて考えていたら深澤くんと遊びに行く当日になっていた。



家を出る前、念のためリビングのソファーで漫画を読みながら寛いでいる弟に確認してみても弟は私に興味なんてないから見てもくれなかった。



ちょっかいでも出そうかと思ったけど『時間大丈夫なの？』なんてお母さんの言葉にハッとして急いで家を出た。…新しいパンプスなんて履いちゃって、浮かれてんのかな。私。





『……居る』




思わずそんな事を言ってしまうくらいには、深澤くんと二人で遊ぶ事にまだピンと来ていなくて。待ち合わせの駅の前にスマホを弄りながら立っている深澤くんを見つけては心臓がドキドキと鳴り始めた。



変じゃないかな、服おかしくないよね。メイクちょっと気合い入れすぎちゃったかな、なんてショーウィンドウに映る自分の前髪を少し整えて深澤くんの元へ向かった。




深「──あ、Aちゃん」


『！』




顔を上げて私を見つけた深澤くんがふわっと笑って手を振ってくれる。深澤くんの笑顔ってなんか安心感あるなぁ。お待たせしました、と言えば『さっき来たところだから』って。




深「…今日のAちゃん可愛いね」


『っえ、』


深「や、ミスった。いつも可愛いけど、今日は一段と可愛い」


『い、いや…そんな事は』


深「メイクいつもと違くない？私服も初めて見たけど超可愛い、俺好き」


『…あ、ありがとう……』




確かに、学校に行く時よりもちゃんとメイクしたけどよく気付いたな…深澤くん。さらっと言われる言葉たちに顔に熱が集まるのが分かった。



恥ずかしくなって何も言えない私とは裏腹に、深澤くんは上機嫌に笑っていた。そんな深澤くんの雰囲気も学校とは少し違う気がする。






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