[ガレキ牛]ラブ・ドールが愛せない (ページ3)

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壱．梅花空木に出逢った日ページ3

【視点なし】

空木莉菜(うつぎれいな)こと、レトルトは、今現在ピンチである｡
ぶつかった拍子に腕が折れたから、慰謝料請求なんて言う古い手口を使う怖い兄ちゃんに、追いかけ回されているのだ｡
路地に逃げ込み、なんとか逃げようとするが、日頃の運動不足が災いし、息が切れてくる｡

十字路に差し掛かった時、反対側からも来たため、慌てて急ブレーキをかけた｡
すると、前からも後ろからも迫ってくる怖い兄ちゃん、左右は少し行ったら、行き止まり｡
袋小路というやつだ｡

怖１「ゴルァァァァ！捕まえんぞォ！馬鹿なやつだなァ！自分からネズミ捕りにかかるなんてよ！」

怖２「慰謝料よこせェェ！！」

レトルトは死を悟る｡
東京湾でコンクリ固めにされて沈むところまでは想像できた｡
『やァ、探したよ｡遅くなってごめんね』と、左側から声が聞こえたと思えば、自分の体の方向がおかしくなっていた｡
いや、可笑しくは無いのだが｡
「なんだ？あの餓鬼」と眉を顰める怖い兄ちゃん｡
１５０ｃｍばかりの少年に、レトルトは、いわゆる「お姫様抱っこ」というものをされているらしい｡

レ『え？なに、え？だれ？』

貴『そうそう｡お兄さん、まだ死なないから大丈夫ですよ』

そう言う少年の髪は銀色で、瞳は金色に輝き、肌も陶器のように白いではないか｡
世にいう、美少年とは彼のような者をさすのであろう｡
袋小路の左側へと足を進める彼に、『そっち、もう行き止まり！』と切羽詰まって言うと、『大丈夫｡心配しないで』と呟く｡