[実況者]蟹は幼女と暮らしているらしい【レトルト】 (ページ10)

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４０．幼女の兄ページ10

視点【キヨ】

貴『アァ、いや｡兄弟はいるよ｡別にそんなに気まずそうな顔しなくても良い｡兄弟は好きなんだ』

キ『そう？…弟？』

あまり気にもしていないらしいけれど、なんだか引っかかる｡
特にこれと言ったものがないから、小さなことなんだろうけど｡

貴『兄だ｡兄はブロンドの髪に青色の瞳を持つ、比較的綺麗な顔をしているよ｡性格も優しくて、温和で｡…まァ、私以外をあまり信用しようとしないのは、兄の悪い癖だが』

そう言って、懐かしそうに笑う悠｡
『イケメンなんだろうなァ』と言うと、『早苗さんも充分カッコイイと思うが…』と言われて、少し嬉しい｡
『名前は何ていうの？』と聞いてみると、案外簡単に教えてくれた｡

貴『遥(ハルカ)というんだ｡遥は私のことを……』

キ『悠のことを？』

貴『えっと……｡キヨさんと同じように、チカと呼んでましたよ』

『重度のブラコンであること以外は、とてもいい兄なんだがね』と言って、ちょっと不器用に笑う悠｡
今、ウソついたんだよな｡
知られたくないことなんだよな｡

キ『そっかァ｡そのお兄ちゃん｡遥はいくつなんだ？』

貴『兄は今、１６だったかと｡兄の誕生日は、なんと私の一ヶ月後なんだ！凄いだろう？３月１４日なんだ！』

ニコニコと楽しそうに言う悠に笑いかけて、『遥のこと、好きなんだな』と言うと、『大好きだよ｡とても、大好きだった』と言って、次は窓の外を一度見て、『早苗さんには、兄弟はいるのかな？』と聞いてきた｡

キ『俺にも、兄ちゃんがいる！これがまた俺に甘いのなんのって』

そんな幾重にも枝の分かれる他愛のない話を繰り返す｡
『大好きだった』と言葉がなければ、ずっと楽しかっただろうに｡
ずっと、気にもならなかっただろうに｡
悠は自分の言葉をあまり意識していないらしいから、無意識なのだろう｡