夜更かし吸血鬼と臆病な子【zh】

私は ページ23

学校で居場所がなくなって、何をするにもやる気が出なくなった。
家族がいなくなって、すがるものがなくなった。

私に残ったのは保険のお金と、親に最後に買ってもらったスマホだけ。


なにをしたらいいのかわからない。
なにを考えたらいいのかわからない。

なにがしたいのか、わからない。


暗い毎日に引きこもっていた時に、
一つの動画を見つけたのだ。

かっこいい男の人が、ゲームをしている動画。
と思えば、楽しく会話してたり、他の人とゲームをしたり。
多分色んな動画を繋げて紹介しているようなものだ。


その人は、これ以上にないくらい私の目に眩しく映った。

そうだ。彼だ。

私は会ったことがあるんだ。

「この世界」でも、「向こうの世界」でも。



それは心の片隅にあったんだ。


なんでこんな楽しそうなんだって思った。
どす黒い何かが生まれた。
私にはなにもないのに。
何も力を持ってないのに。
動画を消すどころか、端末すらも投げてやろうか迷った。

でも、ふと笑ってしまった。

そうしたら全身の力が抜けて、ごく自然に笑えていた。

口角の筋肉を使うなんて、いつぶりだろうか。


楽しい。
面白い。


久々の笑顔に疲れた。

それからだった。




笑顔でいよう、って思えたのは。

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