8．北サン ト ページ15
．．．
早朝のロッカールームには
隅の方で壁側を向きジャージを着るオレと、
「なしていつもそないに端で着替えとんの」
3年、北信介の2人だけ。
彼の平坦な声に、ギクリ、と肩が跳ねる。
「な、なにがですか？」
「Aのロッカーはそこちゃうやろ、もっとシャキッと着替え」
「や、オレこういうすみっこの方が好きなんで。
ここら辺のロッカー使ってるやつ来たらどきますし。お、お構いなくー⋯」
「⋯⋯」
沈黙。
肩越しにチラリと振り向いてみると、
(うっわ⋯⋯)
北さん特有のパッチリした目がこちらをじっと見ていた。
正直に言おう。
オレは北さんが苦手だ。
なんでもこなす、隙の無い完璧超人 北信介。
あの人を前にすると
オレのことを全て見透かされているように思えてならない。
それだけじゃない。
この人、
部活に来るのがとんでもなく早い！！
女だとバレないよう誰より早く部室に来て
ササッと着替えて体育館に行く、
がオレの理想。
だというのに、
この人はいつでもどんなときでも1番に部室に居て、
既に着替えを終えている。
もちろん、
トイレで着替えたりすればいい話だというのもわかってる。
けど、
『毎度トイレで着替えるん、面倒やろ。
部室空いとるんやし部室で着替え』
と、あの目で真っ直ぐ言われたら抵抗できない。
だからこうして、北さんに見られないようにこっそりと着替えを済ますようにしている。
最低限の布面積は確保した上で、だが。
胸はサラシを巻いて潰してる。
もし見られても、
「怪我してまして」「包帯ですコレ」
と言えばごまかせなくもないかもしれない。
でもコワイ！
北さんすっっごいコワイ！！
油断ならない！！！
「あの⋯もう北さん着替え終わりましたよね。体育館、行かなくて良いんですか」
「⋯⋯せやな。じゃあ、先行っとる」
「はーい⋯⋯」
バタン、と扉が閉まる。
「ッ⋯⋯⋯⋯ブハァ！」
まったく、なんて息の詰まる時間なんだ。
．
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湧緋(プロフ) - しずくさん» 感動してくださったのでしょうか！とても嬉しいです！！すれ違いは書いててツライですね…。けどハッピーエンドを目指します！ 侑に聞こえているかは、ぜび完結編をご覧下さい！ コメントありがとうございます！ (2020年3月14日 13時) (
レス) id: ae4a71a3cf (このIDを非表示/違反報告)
湧緋(プロフ) - 猫太郎丸さん» またまたコメントありがとうございます！頑張って2人を幸せにしたい！ので、楽しみにしていてください！ 完結編もぜひ！ (2020年3月14日 13時) (レス) id: ae4a71a3cf (このIDを非表示/違反報告)
しずく - どうしよう・・・涙がとまりません。2人の思いがすれ違ってなんかかわいそうやけど、夢主ちゃん最後にさらっと告白してるとこ侑くんに聞こえてるんでしょうか？ (2020年3月12日 18時) (レス) id: db0ac314d3 (このIDを非表示/違反報告)
猫太郎丸 - ヤバいです。涙が出ました。侑くんと夢主ちゃんのすれ違いがもどかしくて心が締め付けられます…。続きを楽しみにしています！ (2020年3月12日 17時) (レス) id: 3db7769967 (このIDを非表示/違反報告)
湧緋(プロフ) - 猫太郎丸さん» わーい！！ありがとうございます！頑張ります！！！ (2020年3月3日 14時) (レス) id: ae4a71a3cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湧緋 | 作成日時：2020年3月2日 14時
