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｢さ、早く用意して寝るよ。ただでさえクレンは寝起き悪いんだから。｣
｢へいへーい。ふくたいちょーの仰せのままにー。｣
｢クレン先輩ってば少しは反省してくださいよ。｣
｢そういうイスパールも寝不足の時はとことんダメなんだから早く寝る！ほら、スーツケースは倉庫から探して持ってきてあげたから。｣
｢ああ、ありがとうございます。｣
｢じゃあ私も自分の支度してくるから、なんかあったら私の部屋に来て。｣
ガラガラとスーツケースを引いて自分の部屋のドアを閉じる。
こういう日のために部屋を掃除しておいた甲斐があった。
パッキングは30分で終わり、2人の手伝いをして寝ようとした時に、ふと机の上の写真に目が止まる。
｢あれから7年ですって。隊長。あなたはどこへ行ってしまったんですか…｣
旧帝国B隊隊長、カレン·ハルヴァータ。
彼女は7年前の大戦にて行方不明になり、その後定期的に文通をしていたものの2年前にその手紙すら来なくなってしまった。
｢再招集時にあなたがいないとこんなに大変なんですから。お願いだから早く帰ってきて…｣
｢まーたしんみりしてんの？副隊長さまは。｣
｢クレン…部屋に入る時はノックしてよ。｣
｢んな強がり言ってる場合じゃないでしょうが。また起きたら目が腫れて痛いよーって言う羽目になる…｣
｢はは、もう泣かないから。それで？なんか私に聞きに来たことがあるんじゃないの？｣
｢そう、お金貰ってなかったから。｣
｢そうだったね。…ほら、どうぞ。｣
｢さんきゅー。んじゃおやすみー。｣
クレン…彼には苗字がない。
彼が8歳の頃に彼の祖国で内戦が起き、家族…正確には養父母と実子達がみんな殺されたそうだ。
マシンガンを握りしめて家の中に篭城していたところを保護され、そのままこのB隊に入隊することになった。
初めの頃は威嚇しまくりで手が焼けたけれども…今となっては弟みたいな存在で、すごく頼りになるようになった。
彼は隊長のことが好きだったから、私よりも泣きたいはずなのに、ずっと我慢している強い子だ。
だから、早く隊長を探し出さないと。
｢…おやすみなさい。隊長。｣
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作者名：猫村 ゆきみ | 作成日時：2024年2月20日 8時
