フリージア (ページ7)

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ギャンブルと言えど、稼いだ無けなしの金を
すべて酒に変えてしまう父さんと

夜の仕事をして、毎回違う男の家に入り浸る母さん

ふたりとも、俺のことなんて見向きもしない

子供を育てる気のない親になんか頼りたくないし

それでも

" 何があっても、優斗は頭がいいんだから高校だけは卒業しなさい "

って死んだじいちゃんが言ってたから

努力して、進学校に入って

学校に隠れてコソコソバイトして

何とか上手くやってきた

けれど、そんなのバレないはずがなかった

バレないと信じていた俺が馬鹿だった

今日、いつも通りに学校に行ったら

( 高橋、ちょっといいか )

先生の呼ぶ声に何となく予想はついた

『優等生だと思ってたのにな』

差し出されたのは、コンビニで働く俺の写真

名前も知らないクラスメイトにチクられて

学校は即刻退学

じいちゃん、ごめん、約束守れなかった

どうせ家に帰っても

酒で暴力的になった父さんだけがいて

なんで帰ってきたんだ、と詰られるだけ

反抗すれば飛んでくる拳

母さんはそれを見たことがないから

言ったところで

あの人がそんなことするわけないでしょ、の一点張り

だけど俺は知ってる

母さんは、俺が父さんにそうされてるのを見たくないから

いつも逃げてることを

もう、俺に帰る場所なんかない

愛される場所なんかない

毎日通った歩道橋

この地域でも特に多い交通量の道路にかかっているから

きっと死に場所にはちょうどいい

じいちゃん、ごめんな、もうすぐそっちに行くから

少しだけ高い欄干に上りかけて

『何してるのっ』

その言葉は、明らかに俺に向けられていた

走ってくる人影

それを横目に飛び降りることだって、出来たのに

それをしなかったのは俺の弱さか

それとも、あの声の強さか

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