5 剣豪、外科医、目つき ページ6
ソファに腰掛ける二人に紅茶の入ったティーカップをお出しする。
この家に人が来るなんていつぶりだろうか、もう覚えてはいない。
「ボロ屋と言うから小屋を想定していたが……荘厳な屋敷だな」
ローはティーカップに手をつけず、辺りを見回している。
「ええ、でも古くってどこもかしこもギシギシ音を立てちゃって……そういえば二人とも威圧感があるから、今日の帰り道は誰にも何もされなかったな…」
「……いつもこうはいかねえか」
「慣れてますけどね!全然!でもあなた方がいると皆縮こまっちゃって……ちょっと優越感、かも」
ローに微笑みかけていると、その横からドン、とゾロが地面に刀をついた。少し和らいでいた空気がピシリと硬くなる。
「世話話はいい。おれはロロノア・ゾロだ。お前、名前は?」
「あ、失礼しました。まだ名乗ってませんでした……Aといいます。なんとでもお呼びください」
「じゃあA、この島はなぜ揃いも揃って髪色まで黒色なんだ?」
その質問に答えるのと私の状況を説明するのはほとんど同義だった。
「はい。この島において黒、というのは高貴な縁起のいい色とされています。皆の髪色が黒色なのは、外の世界からの混血を拒み、同じ民族としか結婚しないから…。」
「お前は?」
ローがすかさず私に質問する。私は、私は……
「見ての通り、金色です……この島における金色は何よりも忌み嫌われるもの……身寄りのない私は、こうして島の端っこに住まわせてもらっています」
思わず自分の髪の毛をぎゅっと握る。
この色が私には何よりも憎いものだった。
「それがお前が石を投げつけられる相応の理由という訳だな」
「…はい」
文化というのはある程度の理不尽を内包する。
私のきんいろは醜い。それだけだった。
「くっだらねえ!」
そう心底イライラとした声を挙げたのはゾロだった。
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作者名:ヤソップ | 作成日時:2021年2月13日 10時