37 同じ轍は踏まない ページ38
「昨日も思ったが半壊…というか全壊に近いな…」
「めちゃくちゃですね、もう」
ローは屋敷の惨状に肩を竦める。
私もなんと言ったらいいか分からない。
ルフィとゾロはとんでもない連中だということはよく分かった。
「フローレンス家の一族はどうなったんですか？」
「ナミ屋が言うには残った商船に乗って逃げていったらしい。どのみち写真まで撮られりゃここには居られねェよ」
「……そっか」
存外、呆気ない。
長きに渡って私を虐げてきた一族は、こうもあっさりとこの島から手を引いた。
「不満か。追いかけて殺してもいいが」
「いいえ？復讐とか、意味ないし。今が幸せならいいよ」
「…無意味か」
「え？」
「いいや、気にするな」
ローの反応に違和感を覚えたが、それ以上何も言うつもりはないらしかった。
「あ、地下があるっぽい。瓦礫どかせば行けるかな」
私がそう呟くと、無言でローは片手をかざす。
あれだ、ルーム！だ。
瓦礫は取り除かれていく。
「前から思ってましたが、不思議な力を持ってますね。…詮索しちゃダメですか？」
「構わねェ。悪魔の実は知ってるか。おれはその中でオペオペの実を食べた。」
「知ってます！ローさんてばカナヅチなんですか？意外！」
「代償だ。仕方ねェだろ」
「悪魔の実って美味しくないらしいですけど」
「…食いもんに困って食ったんじゃねェよ」
「あ、あはは！そうですよね！悪魔の実って1億ベリーはくだらない価値で取引されてるそうですし」
いや、食い意地が張ってて申し訳ない。
ちょっと恥ずかしくなった私は地下室への階段を降り始めた。
「明かり、持ってくれば良かったなぁ…」
「ランプが吊り下げられている。着火するものがあれば…」
「ライターとか、マッチとか…ローさん煙草吸ったりしないんですか？」
「…しねェ」
それで私とローは瓦礫から着火物を探し始めた。
豪華なシャンデリアの欠片とか、割れた食器とか、そんなガラクタしかない。
「昔、恩人が煙草を吸ってた」
ポツリ、ローが零した。
「恩人……私の恩人はモフモフの帽子を被っています」
「はっ、そうかよ。……ドジで、よくライターでファーを焼いていた」
「ふふ、面白い人ですね」
「死んだがな」
何も言えなくなった。分からない。
私はローを、知らない。
「そんな顔するな。もう割り切った話だ。」
昔話をするかと、ローは瓦礫の上に腰掛けた。
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作者名：ヤソップ | 作成日時：2021年2月13日 10時
