32 これで良かった ページ33
現在、私は無理を通してキッチンにいる。
客なんだからしなくていいと言われたが、ローと気まづすぎて甲板に出られなかった。
流石に水仕事はやめてくれと言われたので、洗われた皿の水気をふきんで拭き取る作業をさせてもらっている。
「はぁぁ〜……」
「さっきから何度目だそのため息」
「ゾロさん……どうすればいいでしょうか……はぁぁ〜」
「ヤメロ、辛気臭せェな！」
カウンターの前に腰掛けて徳利を煽るゾロを正面に、私は本日何度目か分からないため息を零した。
「ローさんのことは気になります……気になりますけど……はぁぁ〜」
「何が悲しくてテメェの愚痴をツマミに酒を飲まなきゃならねんだ」
「ローさんを傷つけちゃったかも…私恩人になんてこと…」
「そんなんで傷つくタマかよ！海賊を舐め過ぎだクソガキ」
「クソガキとはなんですか！素敵なレディと呼んでください！！」
「きっしょく悪ィ…あのクソコックじゃねんだ。クソガキで十分だろ」
口の減らないっ！ムカつく気持ちで皿を叩き割ってやろうかと思ったが、割って悲しい思いをするのはサンジである。
思いとどまった。
「ホントだったらゾロさんに相談しようとは思いませんよ…こういうの、ナミさんに相談したかったんです…」
「やめとけ相談料取られるぞ」
「もうなんでもいいです…屋敷に戻れば金目のものはありますし…」
「オイオイ相当キてんな」
「キッチンだから作業しながらサンジさんに相談しようかなとも思ったんですけど、
戻ってきても忙しそうですぐ居なくなっちゃうし…」
「そりゃな。だがアイツはお前を口説き始めるぞ」
「それで結果的にゾロさんに……グゥっ……」
「ご臨終サマだ」
ヘラ、とゾロは笑って地酒を注ぐ。それでも無視してこないから、つい私はダラダラと喋り続けてしまう。
「あ、ブルックさんが何か弾いてる」
「そろそろ宴もおしまいだな。大合唱からバイオリンの独奏になったらみんな寝始めた合図だ。」
「へぇ…あ、片付け手伝わなきゃ」
「やめとけ。仕事のジャマだ」
「ジャ、邪魔にならない程度にしますよ！」
「違ェよ」
はぁ？と言おうとする直前、大量の皿を抱えたサンジが現れた。
「おうおうクソマリモいいご身分だな酒かっくらってAちゃんとおしゃべりしやがって……ッ！」
「うるせぇのが来た。おれは退散する」
そう言ってゾロはダイニングから出ていってしまった。
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作者名：ヤソップ | 作成日時：2021年2月13日 10時
