28 希望の灯火 ページ29
「どうするA、おれはこの島がどうなろうと知ったこっちゃねェ。
ここまで深入りした以上、テメェが望むなら全員殺しても構わねェが？」
ローは冗談なしに真剣にそう言う。何もそこまでしなくたっていいと思うが。
「いいや、本当なら死んで詫びろって思っちゃうけど、みんなはフローレンス家の被害者でもあるし、この島は嫌いじゃない。
だから…ここを豊かな島にして……みんなが…幸せに暮らせる………」
言葉が出てこない。良い島にしよう。やり直そう。そう言えば良いだけの話。
「善人なのはいい事だが……それにテメェが苦しんでちゃワケねェな」
「だ、だって、わかんない。マトモに会話したのも昨日がはじめてなのに、」
「本心を言え。お前は何がしたい」
「………私この島から出ていきたい。ここじゃ私、笑えない！」
言った。言い切った。ここに私の居場所はきっとない。これから作って貰えたって、嬉しくない。
「だとよ。爺さん」
「ああ、豊かな島にする。君にしたことを風化させない、必ず忘れないようにする。
それで、お兄さん、彼女を連れて行ってくれないか？
その方が彼女にとっても良さそうだ。」
「あー…おれはあの船のクルーじゃねェんだが……
まぁ、いつも麦わら屋のワガママに振り回されてるしな。多少の無理は通そう。」
ローはバツの悪そうに帽子の唾を触る。
私もしかしてとんでもないワガママを言ってしまったんじゃ、
「そ、そんな、私ローさん達に迷惑掛けてまで出ようなんて」
「迷惑とは言ってねェ。アイツらも喜ぶだろ。次の島まで連れてってやる」
次の島まで、という制限つきにズキリと心が傷んだ気がするが、乗せてくれるだけ有難い話だった。
「ケジメがついたなら帰るぞ」
「あ、はい！」
帰る、と言って自然とサニー号に足を向けるのが嬉しい。
私の帰る場所は当主から与えられた屋敷ではないと言っているようで。
早足に歩くローについて行くのは大変だったけど、時々スピードを緩めたり、立ち止まったりしてくれる。
ああ、こんな幸せな帰り道、あってもいいんだろうか。
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作者名：ヤソップ | 作成日時：2021年2月13日 10時
