愛情心傷ステップ【轟焦凍】 (ページ10)

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Aside

轟君が唖然としている。

零れ落ちた涙は君の心を動かすには軽すぎて役にも立たない。

手首から手を離し首を絞める。

苦しそうだけど、まっすぐ此方を向いている。

手が自由なのに私を退けようとはしない。

なんで、君は優しい？

嫌だ。

気持ち悪い。

私の涙が止まらない。

轟君、目を合わせないで、なんて言葉も出てこない。

苦しい。

私は締められてないのに、轟君が苦しいはずなのに、力を入れれば入れる程苦しい。

くるしい、苦しい、苦しい。

「A」

掠れた声で私の名前を呼ぶ轟君。

私は見たくなくて俯く。

「…A」

手を振りのけて私の方をじっと見つめる轟君。

ああ、10分過ぎたのか。

「……A」

『……』

どさり、と今度は私が押し倒される。

無理だ

辛い。

左右で色の違う瞳が私を捕らえる。

すっと伸びた腕に目を瞑る。

何も見たくない、と願いながら。

「………A」

私の耳元へ顔を近づけられる。

足と足の間に轟君の足があり、迂闊に足が動かせない。

轟君の片手だけで両手とも頭の上で押さえつけられ手も動かせない。

反抗できない。

無理だ、嫌われた。

くるしい、こわい。

どうしよう

ころせなかった。

「………A」

優しい言音で私の名前を呼ぶ轟君。

やめてよ、

苦しいよ。

『……』

「目、開けろ」

私が目を開ける。

「…好きだ」

驚いて目を見る。

というより感情があふれ出したから、不意に見てしまった。

「やっと目が合った」

そう笑う君の瞳は綺麗で、

ああ、

やっぱり好きだなぁ。

なんて、

殺させないでくれてありがとう、

なんて。

やっぱり、

君には勝てないなぁ、って思ったんだ。