一郎が消える話 (ページ14)

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二郎の思いページ14

1｢…じろくん｣

あれから何度呼びかけても二郎からの返事はない。

リビングのソファに座って俺とは目も合わせようとしない。

困ったなと思いつつも、俺は怒られるの覚悟で最後の一手を打った。

1｢うっ…！あ…！！｣

二郎の後ろで胸を苦しそうに抑えながら倒れるフリ。

その俺の声と、倒れる音で二郎は思った通り直ぐに俺に駆け寄ってきた。

2｢イチくん！！｣

焦りながら俺の身体を起こそうとする二郎に思わず俺は吹き出してしまい、それが演技だと二郎にすぐにバレた。

2｢信じらんねぇ！！アンタがやると冗談に聞こえねぇんだよ！｣

案の定、顔を真っ赤にした般若と化した二郎が俺の前に居た。

1｢いやいや、俺の話をきかないからだろ？何度も呼んでんのに…｣

改めて座り直した俺は、頭をポリポリと掻き軽く言った。

そんな俺を見て、本当に大丈夫だと思った二郎は
ブツブツと話し始めた。

2｢だって…イチくんだってわかってるんでしょ、自分がどれだけ危険な状態か …俺、怖いんだよ｣

そうゆう二郎は自分の腕を力強く掴んだ。

2｢本当に1日でも見ない日があれば不安になるくらい…。それにイチくんはさ、気づいてないかもしれないけど半年前よりもだいぶ痩せたんだよ。｣

言いながら二郎の目にはまた涙が溜まってくる。

2｢俺、周りからはしっかり者って言われてるけど
違うんだ…俺にはイチくんがいないとダメなんだよ…ねぇ、兄貴、どこにもいかないでよ…｣

そう言って静かに流す涙で俺の服は濡れた。

俺を抱きしめる二郎の腕は力が強く、
俺にもたれる身体は微かに震えていた。

1｢…だなぁ、じろくんは俺がいないとなーんも出来ないもんなぁ(笑)｣

俺が二郎の頭を撫でながらケタケタと笑う。

2｢…そう、だよ…｣

その日、俺の胸で泣きじゃくる弟はいつもよりも幼く見えた。