一郎が消える話 (ページ2)

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帰省ページ2

暑い日差しに生温い風。

いつだって変わらない光景。

それでも、この丘から見える景色に飽きたことはない。

下を覗けば色とりどりの屋根が見える。

そんな中で自分の家をすぐに見つけた。

『みっけ！ふふ、相変わらずボロボロだなぁ(笑)』

風が吹く度、少し明るい髪はふわふわと揺れる。

ｼﾞｬﾘ…

丘から見える景色を眺めていると
自分以外の音が段々と近付いてくる。

2 ｢久しぶり、一郎くん｣

久々に自分の名前を呼ばれて振り返れば、1人の男性が白い花を抱えてにっこりと微笑む。

1『うわ、すげーな。』

2 ｢今年も暑いね｣

1『そうだなぁ…皆少し見ない間におっきくなったなぁ～』

4｢私と五郎くんはもう高校生になりましたよ｣

1『もうそんなか。はえーな』

3 ｢いっちゃんが好きな雑誌買ってきたよ｣

1『ありがとう！ちょうど暇だったんだよ』

5 ｢…ごめん、迷惑かけて｣

1『いいんだよ、みんな反抗期なんてあるだろ？』

5 ｢俺、散々いち兄に酷いこと言ったし、心配かけた｣

1『気にすんなよ、じろくんに比べればしろとごろは可愛いもんだよ』

4 ｢…会いたいよ｣

1『…俺もお前らを抱きしめてぇな』

5 ｢いち兄…｣

1『泣くなよ、ごろ…って、なんだよ全員泣いてんじゃんか(笑)』

3｢いっちゃん…！またいっちゃんの声が聞きたいよ！｣

. .
俺の墓の前で4人の俺の弟達が
涙を流す。

その落ちた涙は、冷たい石(俺の足元)を静かに濡らした。

2｢…未だに信じられないんだ、貴方がいないことが。｣

1『…もう1年も前なのに、しょうがねぇ奴らだなぁ…』

静かに涙を流すじろくんの頭を、撫でる仕草をして
やる。

風が吹き、空を見上げれば澄んだ青空がどこまでも広がっていた。

一年前の今日。

俺は病気のせいで死んだ。

4人の弟達を残して。