ひかりふる【鬼舞辻無惨】 (ページ39)

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苦しむよりも、ページ39

無「…もう、忘れろ」

白い手のひらを母の血で濡らした無惨さんは、全てわかっているといった具合で
わたしを慈しむように慰めてくれる。

ーーその時、開いたままの引き戸に再び人影が現れた。

「…あ、」

父「おいうるせぇぞ!!静かにし………………」

ザシャッッッ

また、鈍い音が響く。

無「…お嬢さんは私が頂いていきますね」

床には母と父『だったもの』の血飛沫が混同している。

父に関しては病気の事もあってまだ弁護の余地があったが、
昔からわたしに金を貸す事をせがんできたりしたのでそこまで悲しくはなかった。

むしろ、『解放された』とさえ思えてしまった。

「………う、う、」

無惨さんに抱きつく。

無「大丈夫だ……
Aを愛さない親の事などもう忘れろ」

無惨さんはそう言って、抱きしめ返してくれる。

ああ、

この人はわたしの家族以上の存在なのだと、身に染みつくほど実感する。

彼だけが、わたしの全てをわかってくれている。

無「A、安心しろ…
これからも私が側にいる」

こういうのを〝幸せ〟と言うのだなあ、と

改めてそう思わずにはいられなかった。

わたしは暫くそのまま彼に抱きついた状態でいたのだった。