ライブ3 ページ47
もうすぐ着くと連絡が入った後、日付をちょっと過ぎた位に北斗は来た。
ドアを開けた途端に抱きつかれた。
脱力しているのかいつもより少し重い。
「ん〜〜Aだあ。」
お酒を呑んだのか、顔が少し火照っている。
そして随分とご機嫌な様子が伺えた。
「北斗呑んだねえ。」
「へへ、のんだ。」
ふにゃって笑う北斗は、先程までライブでシャウトするように歌ってた人物には見えない。
「疲れたでしょ？はやくお風呂入って寝なね。」
「ん〜〜〜まだAとこうしてる！」
一瞬子どもみたいで可愛いなと思ってしまったけど、私は明日仕事だし、北斗だって疲れがあるはずだから心を鬼にして風呂場に連れて行った。
ーーー
「お風呂いただきやしたー」
タオルでガシガシ頭をふいている北斗が寝室にやってきた。
お風呂に入って酔いが醒めたのか、甘えたモードの北斗はどこかへいってしまった。
私は読んでいた本を閉じて、ベッドに北斗を迎え入れる。
「お風呂上がりなんか飲んだ？」
「冷蔵庫にあったお茶飲んだ。」
「そっか。歯磨きは？」
「済ませた。」
何度もうちに来ている北斗は自身の歯ブラシやらパジャマやらマグカップやら色んなものを置いていて、もはや慣れた様子である。
「じゃあ、あとは寝るだけか。…ってドライヤーで髪乾かさないとじゃん。」
「今日はもういいや。」
余程疲れているのか髪を乾かすことを投げ出してしまっている北斗。
「いや、風邪ひいちゃうでしょ、待ってて、ドライヤー持ってくる。」
風邪をひいてお仕事を支障がでたらと思うと気が気ではない。それに、北斗が元気に笑っているだけで救われる人はこの世界にたくさんいるのだから放っておくわけにはいかないのだ。
急いで寝室にドライヤーを持ってきたけれど、そのほんの数秒で北斗はうつ伏せになってすっかり寝るモードに入っていた。
無理矢理起こして、ってやろうとしたけど、なんだか可哀想に思えて、膝枕みたいにしてドライヤーをかけ始めた。
そしてドライヤーの音と音の間からするわずかな声で会話した。
「今日ライブ…どうだった？」
疲れてるからかいつもより声が低く感じる。
「ライブ良かったよ。迫力あってビックリしちゃった。」
「ふふ、でしょ？…もうめっちゃくちゃ色々考えたんだから。」
「うん、それにアイドルの北斗かっこよかったし、誇らしかったよ。」
褒めると、北斗は目を閉じたまま満足気に笑った。
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作者名：あん | 作成日時：2023年10月19日 2時
