ホワイトデー3 ページ43
目覚めると辺りはもう薄暗くて、遠くから小学生の明るい声が聞こえる。おそらく帰り道に友達と話しているのだろう。枕元に置いてあったまばゆいスマホの画面で時間を確認すると17：15だった。
そこで、あれそういえば北斗来てくれたんだっけ、とふと思い出した。だけど近くに北斗の姿はなくて、帰ったことを瞬時に理解した。
北斗が来たのは夢かと思ったけど額に添えられている冷えたものが現実だということを教えてくれる。
せっかく会う約束立てたのに体調崩しちゃって申し訳ないな、とか北斗に風邪うつってないといいな、とか思ってたらなにやら物音がして人影が見えた。
その人影は近づいてきている。なんかブツブツ独り言を言ってるようだった。
「…北斗？」
「ん、あれ起きた？」
薄暗い視界の中でもしかして、と声を掛けたらやっぱりそうだった。北斗は「ごめん今トイレ行ってた」なんて付け加えてふにゃ、って笑った。
ゆっくり体を起こすと、体調を気遣って背中をさすってくれた。
「体調どう？だいぶ良くなった？」
「うん、ごめん。なんか色々。」
「いいのよ。Aが元気なのが1番だから。それに家にいてもゲームとかしてただけだろうし、さっきまで好きなお笑いの動画見てたのよ。」
なんて優しいんだろう。体調を崩したことを責めずに私が元気でいることを心から望んでくれている。私、この人の彼女になれて幸せだと思えて、涙が一粒こぼれ落ちた。
「ぅえ！？なにやっぱ体調きつい！？」
急に泣くものだから北斗はビックリしている。
「ううん、ごめん、泣いてばっかりで。すごい幸せだなぁ…って思って。」
そういうと、北斗に抱きしめられた。
「オレだって幸せだよ？Aと一緒にいられて。」
片手は私の頭にのせて、髪を優しくなでる。その仕草があまりにもあたたかくて、また涙が出てくる。
「北斗…」
「ん？」
「…大好き。」
「オレも。」
愛をささやけば、こだまの様に返ってくるのが嬉しくて仕方がない。満たされた気持ちになって、北斗にまわす腕に力をこめた。頭上からは小さく笑っている声が聞こえた。
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作者名：あん | 作成日時：2023年10月19日 2時
