ホワイトデー2 ページ42
遠い意識の中うっすらと音が聞こえた。
何度か間隔をあけて鳴るチャイムの音と、小さく優しくするノックの音。
北斗だ。
本能的にそう思った。
ふらつく足元で壁を触りながら、なんとか玄関まで辿り着きドアを開けた。
「っうお、ビックリしたあ。」
声掛けもなしに急に開いたドアに驚いてる私の愛おしい人。
「ほくとだ…」
ぼやける視界で北斗を捉えて、安心感からなのか、体の力が抜けて前に倒れ込んだ。でも、北斗がとっさに抱き止めてくれて頭を打たずに済んだ。
北斗の冷えた指先が私の額に触れる。
ひんやりしていて気持ちがいい。
「A？ひどい熱じゃない。大丈夫？」
「ん、だいじょうぶだから帰って。うつっちゃう。」
舌足らずでなんとか答えて北斗を追い返そうとする。
全然力が入らない手で、北斗の胸板をむりやり引き剥がそうとしたのに無駄だった。
「もー、そういうこといわないの。ね？Aちゃん。」
こちらの抵抗も虚しくあっさり却下されて、ベッドに優しく誘導される。わざとらしいちゃん付けなんてされちゃって完全に病人扱いだ。
「だめ、かえって。」
「はいはい。わかりましたよー」
私の言うことを受け流して、ベッドの横に座り込む北斗。なにやらビニール袋の中をガサガサしている。
「なんか飲んだ？」
「…なんにも」
「はい、これ買ってきたから。」
手渡されたのは、某スポーツ飲料。
「ありがとう…」
熱にうなされて水を飲む余裕もなかったから正直ありがたい。
その後おかゆとゼリーを食べさせてくれて、薬も飲ませてくれた。
薬は何種類かあって選ばせてくれるあたりも北斗らしいな、なんて考えながら再び眠りに落ちた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 976人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あん | 作成日時：2023年10月19日 2時
