嫉妬9 ページ40
しょうもないことばかり言って笑い合い、仕事の愚痴を言い合う同期。私にとって貴重な存在である。
笑い声を変えてるつもりなんてなかったけど、北斗いわく違うらしい。
「そんなAの姿見てオレには見せない一面もあるんだって知っちゃって心がざわついたよね。もちろん無意識だろうし、こんなこと言ってもしょうがないんだろうけど。」
「うん、、そうだね無意識だった。…っていうかそれずっと黙ってたんだね。」
「だってさ、Aって嫉妬とか嫌がるタイプかと思って言えなかったのよ。取り乱したのってさ、この前の雑誌の時くらいだし、その時だって嫉妬っていうより、遊ばれてたっていう怒りの感情をめちゃくちゃ抱えてたから。」
そうだった。あの時は悲しみから怒りに感情が動いたんだっけ。
「嫉妬するタイプじゃないんだろうなって感じてて、オレが嫉妬したなんて言ったら嫌われると思って黙ってた。」
意外だった。北斗がそんなこと思っていたなんて。もともと私が先に北斗のことを好きになったわけだし、好きな気持ちも私の方が断然大きいものだと思っていた。
「それにさ、嫉妬したとか言ったらお前が言うなって話だしね。」
「え？」
「今回初めてAがオレの出てた作品観て嫉妬してくれたけど、オレ普段から歌番組とかでも色んな人と絡んでるからね？」
まあほとんど話すことはないけど、って付け加える。
難しい。どこまでも私達はすれ違う。相手のことを気遣って、自分の気持ちを抑えつけて、苦しくなって。相手のことが大好きなのに、大好きだからこんなにも苦しい。
「ねえ、北斗。」
「んー？」
「なんかお互い色々あるしさ、全部を話す必要はないけど、話したいときに話したいことを話せるような関係になりたいね。」
私が微笑むと北斗も微笑んでくれた。
気づけば2月も後半。
もうすぐ春がやってくる。
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作者名：あん | 作成日時：2023年10月19日 2時
