疑惑3 ページ19
北斗の家は知ってるけど、住所を丸暗記してるわけではないので「あっち」とか「そっち」とか言ってタクシーを運転してもらった。
北斗の家のマンションに着いて、インターフォンを連打した。おまけにドアもノックする。
酔っていて頭がまわらない私はいつもより大胆だった。
インターフォンを連打してる途中で、ドアが開く。スウェットを着た北斗がそこにはいた。
「北斗。」
「A…って酒くさっ」
手で鼻を抑える北斗を押しのけるかのように家に入り込んだ。
「なんで…なんでさ…、」
そして玄関で俯いてしまった。
「なんで…」
さっきまで頭の中で思っていた言葉が口から出ない。なんで連絡くれなかったの。とかなんで記事の内容否定してくれないの。とか、本人を前にして言葉にできない。
これを言ったらいよいよ終わってしまう気がしたから。Aのこと好きじゃないからだよ、って言われて本当の意味で終わってしまうと思った。
この期に及んで、いまだに北斗のことが好きな自分にあきれた。
過呼吸ぎみになった私に北斗が慌てる。
「A？A？ちょっと落ち着いて部屋上がろっか。」
そう言って背中をさすりながら部屋に誘導された。背中越しに感じる北斗の温かい手のひらの温度に、安堵感と振り払いたい気持ちがせめぎ合う。
ソファに座らされて、北斗も横に座る。
片手を私の手に添えて、片手は変わらず背中をさすっている。
「ごめんね。A。」
過呼吸な私に、北斗が低い声で言う。
「それって…さあ、裏切ってごめ、ん…てこ、と？」
涙は全然出ないのに、呼吸が落ち着かない。
「わたしのことすき、じゃな、なかったんでしょ？あそん、でたんでしょ？バカにして、たんでしょ…」
「ちがうよ…」
「だって、12月って、ついこの前じゃん。その人とうま、く…いかなくて私のとこきたんでしょ、」
「ちがうって。」
思い返せば、付き合う時告白の言葉に、私に新しい彼氏ができてるかもしれないと思って行動できなかったとあった。
でも、その発想自体が自分自身に新しい彼女がいたから生まれたんじゃないの、と思ってしまう。
どこまでも北斗のことを疑ってしまう自分が悔しい。
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作者名：あん | 作成日時：2023年10月19日 2時
