陰キャヒーローな君と。２ (ページ17)

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疑惑。ページ17

2人で家に帰ってから3日程ゆっくり過ごした。そして北斗は自分の家に帰っていった。

何日かした後、北斗から一言だけメッセージが来ていた。

“ごめん。なんか変な記事出るかもしれない“

…変な記事？
変な記事ってなんだろう。

“どういう意味？“

そう返信したけど、北斗からは反応がない。

でも、その意味がわかるのにそう時間はかからなかった。

ー松村北斗、人気女優と熱愛発覚ー

仕事帰りにスーパーに立ち寄ったときだった。入り口付近にある雑誌コーナー。普段なら気にも留めないのに、なんでかその日は雑誌の表紙が目についた。

…え、どういうこと。

驚きすぎて言葉すら出なかった。

少し震える指先でゆっくり雑誌を手に取る。

おずおずとページを開くと、そこにはたしかに北斗が女性の肩をだいて建物に入る様子が撮られていた。間違いなく、北斗だった。

［12月某日。
大人気アイドルグループメンバーの松村北斗が女優〇〇の自宅に入っていくのを我々は目撃した。］などと記されている。

［女優〇〇とは映画で共演しており、仲睦まじい様子が度々映画の公式SNSからも発信されていた。そんな2人がより仲良くなったきっかけは

パタンと雑誌を閉じた。
無理だと思った。これ以上は読めない。これ以上読んだら私の心が壊れてしまう気がした。

そこからの記憶はない。
気づいたら家に帰っていて、食材と、度数が強めのお酒が何本もエコバッグに入っていた。

普段なら絶対買わない度数のお酒を、いつの間に買ったのだろうとぼんやりした頭で考える。自分で思ってる以上に私は動揺していたのかもしれない。

スマホを開いても、相変わらず北斗からは連絡がない。北斗が何考えているのかわからない。

好きだよ、って言葉、嘘だったの？

ふとそんなことを思ってしまう。

心が一気に空っぽになった気がした。
どうして。どうしてなんの連絡もないの。どうしてそんな記事嘘だよ、ってはやく訂正してくれないの。

それからは浴びるようにお酒を飲んだ。
度数が強いお酒だからすぐに頭の中がぐわんぐわんになって気持ち悪いけど、それが今の自分にとって一番心地よい気すらした。

泣きたいけど、号泣するほどの涙が出てこない。ショックすぎて、失恋したことを受け入れられていないんだと思う。いっそ泣ければ楽になれる気がするのに。