＿＿君を忘れたくない【場地圭介】

49話 Fin ページ50

「Aから、場地君への手紙よ。あの日の前日に渡されたの。
もしこの家にもう一度場地君が来たら渡してって」



それを聞いて手紙をもう一度見つめる


場地圭介(ばじけいすけ)君へ



あいつの、丁寧な字だ……し、の形が少し変わったこいつの字


「つか、俺の名前くらいちゃんと読めるっつーの」






『やっほー場地君。この手紙を読んでくれたってことは私は死んで、それでも君は私のことを覚えててくれたんだね。

実は隠してたことがあって……この病気は死んじゃうと親以外の人から私の記憶が消えちゃうの。

黙っててごめん。あるわけないって分かってるのにこの手紙書いちゃって、読まれてる可能性ってほぼないよねコレ？

もし、本当にこれを場地君が読んでくれていたなら、
覚えていてくれてありがとう！

まぁそれは置いといて、千冬とはもうあんな喧嘩しないでよ？私の可愛い弟君なんだから。いつまでも仲良くペヤング半ぶこしてろ！


お母さん泣かせんじゃないぞー！ちゃんと勉強はしようね？それから、手羽先の事君に任せるから！


今も未来も俺の隣にいるのはお前だって言ってくれた時、すっごい嬉しかったよ。場地君の特別になれたって思ったから

けどね？場地君はもっと長い時間を過ごすから、君の隣にはもっと大事な人が出来るかもしれない。そんな時はもう私の事なんて忘れて
その人と幸せになって。


私は君の幸せだけを願ってるから。



あぁ、ダメだ！やっぱり私だけの場地君でいて欲しいよ！

私が居なくなってすぐ女作ったら髪の毛禿げる呪いかけるからね！！


じゃ、あばよ〜！！』




「んだよ……このふざけた内容は……ｯ！」



最後まで丁寧に書かれた手紙を握りしめて、落ちてくる涙を力いっぱいぬぐった



「言っただろうがァ、俺はお前以外を隣に置くつもりは一切ねぇよ……ｯ！」



「ありがとう場地君、Aの事、想ってくれてｯ」




手紙を持ってその日はそのまま家に帰った
何度も何度も読み直して、沢山泣いて


「俺だけはお前を忘れない」

そう自分の涙に誓った























「よォ、Aあっちで男作ってねぇだろうな？」


遺骨の入っていないその墓にやってきた10年前と変わらない長い髪の毛の男



「あれから10年経ったが、俺はまだお前を忘れてねぇし。今でも俺の隣はお前だ。禿げたくねぇし


ま、あっちで気長に待ってろや」




そう言って墓に手向けた花は、よく見るような墓花ではなく



勿忘草だった





Fin


続編出しましたー！

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