＿＿君を忘れたくない【場地圭介】

48話 ページ49

「ｯ！！泣いてねぇよ。」


「そっかぁ……」


わかりやすい嘘に笑を零して、手を場地君の顔に伸ばした


「場地君……私、欲しいものがあるんだ」


「……なんだ、」


「んふふ、「場地」って苗字が、世界一欲しい」



目も鼻も、音以外何も感じない私にとって、それが一番の贈り物だ


「お前になら、やるよ。いくらでも」


「たくさんはいらないよ笑」



誰にも渡したくないもの、私だけが良い……




「いつか君が心から好きになれた人に、あげなよ」



けど、私が君を縛るわけにはいかないから

やるよって言ってくれた、それだけで良い。





「馬鹿だなぁお前」


「場地君には言われたくないよ……」


「だからお前にやるんだろ？？俺はお前の事を心から好きだ。……愛してる
お前以外にくれてやるか。」


「ｯ……言ったね？？浮気したら承知しない」


「そらこっちのセリフだ、目移りしやがったらそいつのこと燃やす」


「物騒。」



君を好きになって良かった、
君と会って私は、想像したことないくらい眩しすぎる世界を見せてもらった。

最後に宝物も貰った、


もう、思い残すことは、無いよ。


たとえ君が私の事を忘れても(・・・・)

私は君を忘れない



「大好き、生まれ変わってもまた、この公園で出会いたいな」



「待ってろ、すぐ見つけてやるから」



「うんｯ……むっ」



日が昇った瞬間、場地君は私に噛み付くようなキスをした

「さよなら」の代わりのような気がした


涙を流し、犬歯を輝かせて綺麗に笑う場地君の顔が、真っ暗だった私の視界に飛び込んできた



それが、最後にみた一番好きな光景です。









Aは最後、綺麗な笑顔を見せて、消えていった

光に溶け込むように、最初からいなかったかのように





最初から居なかったなんて、あるわけない。

俺以外の誰もAの事を覚えていなかった(・・・・・・・・)

千冬も、マイキーも、おふくろも、あいつと会って話した事ある奴ですら誰一人知らないの一点張りだ


俺はちゃんと覚えてる(・・・・)





頭の整理がつかないまま訪れたのは、Aの家だった

インターホンを押して出てきたのは母ちゃんの方で、やつれた顔をしていた


俺の顔を見た瞬間驚いた顔をした



「場地君……どうしてここへ？」


「俺は、Aを覚えています」



それを聞いた母ちゃんは泣きながら「そう、そう」と笑った


家にあがらせてもらい、お茶とともに1つの手紙を渡された


「これ……」

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