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39話 ページ40

日が暮れるのが早くなってきた頃

院内にいる私には寒さなんて分からないけど、面会に来ている人達の服装が長袖へと変わってきていた


血を吐く量も日に日に増え、
味覚と触覚、嗅覚も完全に無くなり、視覚も片目がほぼ見えなくなった


点滴スタンドをコロコロと押して外の景色が見える場所にやって来た
ここは6階だから結構いい景色が見られるお気に入りの場所




「だからってもうほとんど見えないけど……」




もうここに来るのもあと少しだろう。視覚を失えばあとは聴覚だけ。
聴覚を失う時が私が死ぬ時


「案外、短いもんだなぁ」



「何が短ぇんだ……」



私を呼ぶその声に心臓が止まるような気分になった

私はこの声を知っている、知っているどころか、大好きで大好きで、初めて恋焦がれた人の声だ



「場地……君」




でもなぜ、ここに来たの。千冬??




「今日お前の家に行った時、お前の母さんからここに居るって聞いた」



「そっ……か。」



「なんで黙ってた」


「ッ……」



どうしても振り返ることが出来ず、答えることも出来ずただ俯いて黙ってしまった


「こっち向け、」


「ーッ!!」


「こっち向けって!!」



もうほぼ無い力で精一杯俯いていたが、そんなので場地君の力に勝てる訳もなく、一瞬で場地君の方を向かせられ、それと同時に思いっきり抱きしめられた


こんなに近くにいるのに、大好きだったペヤングの匂いも、ほんのり香る柔軟剤の匂いも分からなかった

つらくて仕方が無かった

なのに、無意識に腕を場地君の背中に回してしまう



「会いたかった、ずっと」


「ごめんね……黙っててごめん。」


「なんでこんな痩せてんだ、なんでこんな覇気がねぇんだよ……」




あぁ、だめだ

この手を離したく無くなる。


場地君を好きな気持ちに今までずっと蓋をしてきた

けど、会えなかったこの2ヶ月でさえ思いが膨れていた




場地君はしばらくして私を離した







「A、これが最後だ。

俺はもうお前と一緒に居られない。だから最後にこれだけ伝える。





俺はお前が好きだ。」



真っ直ぐな瞳で伝える場地君の、私を捉えて離さない



「いつからとか、バカな俺には分かんねぇけど。

優しくて素直なお前のことが、心から好きだった」




好きな人の気持ちが知れて嬉しい筈なのに、なんでこうも息苦しいくらい辛いんだろう。




「だから元気で居てくれ。A」





「まっ、待ッ」




私の止める声を聞かず、場地君はその場を去ってしまった





10月30日の出来事だった

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炭子(プロフ) - かえる38さん» 最後まで読んでいただきありがとうございます!!!この作品で感動してくれた事が私はとても嬉しいです!その言葉で書いてよかったと思えます。ありがとうございました! (2021年8月11日 23時) (レス) id: 3a1716b698 (このIDを非表示/違反報告)
かえる38(プロフ) - とっても素敵なお話でした! 心が暖まって、泣けてきて……。無料で読んじゃっていいんですか!?、ってレベルのクオリティで本当に感動しました。素敵なお話を書いてくださってありがとうございます!読んでて凄い楽しかったですっ!!! (2021年8月9日 14時) (レス) id: dc610bcb00 (このIDを非表示/違反報告)
炭子(プロフ) - カメ豆腐さん» この作品で泣いてくださってありがとうございます!!続編、楽しみにしててください笑 (2021年8月8日 2時) (レス) id: 3a1716b698 (このIDを非表示/違反報告)
炭子(プロフ) - はるるさん» この作品で胸いっぱいにできてとても嬉しいです!!お優しいっ!!はるる様も体調崩さぬよう、健康を願っています!!長文ありがとうございました!!また続編もよければ見てくださいね! (2021年8月8日 2時) (レス) id: 3a1716b698 (このIDを非表示/違反報告)
カメ豆腐(プロフ) - ガチで泣いちゃいました!続編楽しみにしてます!! (2021年8月8日 1時) (レス) id: 78458b5353 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:炭子 | 作成日時:2021年7月9日 7時

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