20：友人A ページ21
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「……あっ」
「どうしたの？」
せっかく食堂まで来たのに、今になって財布を忘れたと気付いたのかと思ったが、違った。彼女の瞳は意中の彼を捉えていたのだ。
すぐさま手櫛で前髪を整えた美亜は彼の名前を呼び、引き留められた彼はこちらに振り返る。轟くんは私を見たあとに、隣にいる美亜を見て、行き交う生徒たちの喧騒に紛れて僅かに声を漏らした。
「お前が、文通相手の…」
「うん！私っ、橘美亜です！はじめまして…！」
可愛らしいソプラノの声に、カラメル色の瞳は今までに見たことが無いほどの輝きを放っていてとても綺麗。
そして美亜と轟くんを初めて同時に視界へ収めて気付いた。
“なんて絵になる二人だろう”と。やっぱり轟くんは王子様で、対する美亜は可憐なお姫様。二人のやりとりはロマンス映画のワンシーンのようだ。
私がこの場に居ると、主役二人の邪魔になると悟った。
「いってらっしゃい」
美亜の背中を軽く押し、王子様には聞こえな声でエールを送る。彼女は嬉しそうに大きく頷いて、ミルクティー色の髪を靡かせながら轟くんの隣に並んだ。
揺れた髪から香るのは、いつもより少し強い花の香り。そんな香りを纏って二人が並ぶと否が応でもよくわかる。──自分がどれだけ平凡な人間なのか。私は彼女の友人Aという役柄ですら烏滸がましいのかもしれない。
文通で相手のことは粗方知っているし、元来男の子と距離の縮め方が上手い美亜なら、きっとすぐに彼と仲良くなれる。私のようなヘマもしないだろうし。
そう考えることで、彼女より先に彼とコンタクトを取ってしまった罪悪感は薄れていった。
しかし鼻腔には甘い匂いが留まり、正体不明の息苦しさだけが増長する。もうここに要は無いので踵を返し、人の波をかくように食堂を出た。
そして人混みを抜けても蒸し暑い廊下で、私は目を見張る。
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つぎはぎウルフ(プロフ) - あかねさん» こちらにもコメントしてくださりありがとうございます。楽しみにしていただけてとても嬉しいです。あかねさんも体にお気をつけて、陰ながら創作活動を応援しております。こちらの小説も更新頑張ります！ (2020年7月16日 17時) (
レス) id: 845ea04d4f (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - つぎはぎウルフさんの作品はどれも続きが気になるものばかりで、常に続きを楽しみにしながら読んでいます。これからも更新楽しみにしながら待ってます！体に気をつけて自分のペースで更新頑張ってください！ (2020年7月16日 7時) (レス) id: e8088c70b5 (このIDを非表示/違反報告)
つぎはぎウルフ(プロフ) - きなこもちさん» ありがとうございます。私も楽しみながら書いているものを楽しく呼んでもらえて嬉しいです。コメント読んでいて思わず顔がにやけちゃいました…(笑) 気に入ってもらえて何よりです(o^^o) 更新頑張ります。 (2020年7月14日 18時) (レス) id: 845ea04d4f (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 更新お疲れ様です！いつも楽しく読ませていただいてます。今までそこそこの量のヒロアカ二次創作を読んできましたが、この作品が一番好きかもしれません...！これからの展開がとっても楽しみです(´∀｀)応援しています！！！ (2020年7月13日 20時) (レス) id: 6f695c5604 (このIDを非表示/違反報告)
つぎはぎウルフ(プロフ) - ゆり。さん» ありがとうございます！ヒーロー科×他科の生徒、ということで、接点が少ない分表現が一辺倒になっていないか心配だったのですが、そう言ってもらえて自信がつきました。もうしばらく続きますので、今後も応援よろしくお願いします…！ (2020年7月10日 16時) (レス) id: 845ea04d4f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：つぎはぎウルフ
| 作成日時：2020年6月19日 20時
