19：私はまだその感情を知らない ページ20
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例の空き教室は、轟くんからの手紙を読んだり、次に送る手紙の内容を考えたりする以外の理由でも入り浸るようになった。今みたいに、お昼ご飯を食べる時もある。
「Aが授業中にぼーっとするなんて珍しいね」
そう言って美亜が噛んだウインナーからいい音がした。私は曖昧な返事をしながら最後のおかずを頬張る。
朝からずっと、轟くんと直接会って話したことを彼女に言おうか迷っていた。彼女の不安を煽るような余計なことは口を噤むべきか。正直に言うべきか。言うとしても、どこまで話せばいいか分からない。
それに、彼が笑顔を浮かべた意図も謎のままだ。
「A、どうしたの？」
2人きりの教室にはしばらく雨声のみが響いていたから、豊潤な睫毛の乗った大きな瞳が私の顔を覗き込む。
「ねえ美亜」
「ん？」
「美亜は…いつまで轟くんと文通するの？」
雨音に溶け込みそうな美亜の声がやけに耳に残り、質問の仕方が悪かったことに気付いた。
「ごめん！文通始めてもうすぐ一ヶ月経つし、そろそろ直接話したりしないのかなーって」
「！そういうことね。もう手伝ってもらえないのかと思ってびっくりしちゃった」
そうやって執筆代行の継続をさらりと宣告して、美亜は安心したように笑う。まだ続くんだ、なんて思いながら声音だけ彼女に合わせて笑った。文明の利器がベンチ入りなんて、このご時世にありえるのか。
「私、文通は続けたい」
「…そう」
「でもね、それがAの負担になってることは分かってる。けど、私…」
心苦しそうに眉をひそめる彼女の感情の昂りに合わせて、個性の花の匂いが強くなった気がする。美亜は、不意に私の手を握った。
「私、どうしても轟くんの特別になりたいの」
光をふんだんに含んだカラメル色の瞳が揺らめき、頬を紅潮させてそう訴える彼女はまさに"恋する女の子"で、私には眩しすぎて。今にも憧れと羨ましさが声になって零れ落ちそうだった。
その代わりに紡いだのは、了承の返事。目を赤く染める彼女の頭をそっと撫でた理由は自分でもよく分からない。
「…でもAの言う通り、直接お話もしたいんだけどね」
ミルクティー色の後頭部からまっすぐ下へ落ちた私の手が彼女の頭を再び撫でることはなくて、ぎゅっと握り締めた。
「同じ学校だし、そのうち会えるよ」
咄嗟にそう言ったけれど、根拠もないし彼女の目を見ることが出来なかった。検索したら一番上に出てきそうな方便に違いない。
しかし、その日は唐突にやって来る。
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つぎはぎウルフ(プロフ) - あかねさん» こちらにもコメントしてくださりありがとうございます。楽しみにしていただけてとても嬉しいです。あかねさんも体にお気をつけて、陰ながら創作活動を応援しております。こちらの小説も更新頑張ります！ (2020年7月16日 17時) (
レス) id: 845ea04d4f (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - つぎはぎウルフさんの作品はどれも続きが気になるものばかりで、常に続きを楽しみにしながら読んでいます。これからも更新楽しみにしながら待ってます！体に気をつけて自分のペースで更新頑張ってください！ (2020年7月16日 7時) (レス) id: e8088c70b5 (このIDを非表示/違反報告)
つぎはぎウルフ(プロフ) - きなこもちさん» ありがとうございます。私も楽しみながら書いているものを楽しく呼んでもらえて嬉しいです。コメント読んでいて思わず顔がにやけちゃいました…(笑) 気に入ってもらえて何よりです(o^^o) 更新頑張ります。 (2020年7月14日 18時) (レス) id: 845ea04d4f (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 更新お疲れ様です！いつも楽しく読ませていただいてます。今までそこそこの量のヒロアカ二次創作を読んできましたが、この作品が一番好きかもしれません...！これからの展開がとっても楽しみです(´∀｀)応援しています！！！ (2020年7月13日 20時) (レス) id: 6f695c5604 (このIDを非表示/違反報告)
つぎはぎウルフ(プロフ) - ゆり。さん» ありがとうございます！ヒーロー科×他科の生徒、ということで、接点が少ない分表現が一辺倒になっていないか心配だったのですが、そう言ってもらえて自信がつきました。もうしばらく続きますので、今後も応援よろしくお願いします…！ (2020年7月10日 16時) (レス) id: 845ea04d4f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：つぎはぎウルフ
| 作成日時：2020年6月19日 20時
