#雨【赤】あめさんからのリクエスト ページ29
ガチャンッ!
私たちの幸せが壊れるのは、ガラスのコップが割れるのと同じくらいあっけなくて、儚かった。
ことのきっかけは驚くほど些細なことだった。
彼氏である莉犬くんが私の大切にしているコップを割ったのだ。
ただ、それだけ。ただそれだけでも私がショックを受けるのには充分だった。
癌でなくなってしまったお父さんからの最後のプレゼント。
薄い赤色と、柴犬の柄が入った可愛い可愛いガラスコップだ。
同棲を始める時も、付き合い始めた時も。このコップが私にとってどれだけ大切なものなのか、莉犬くんには説明していた。
何度も、何度も。
だから、ガチャン、とあっけない音を立ててコップが割れた時莉犬くんは、
「ぅあ、ご、ごめん」
と直ぐに謝ってくれた。
だからかな、こんなことになってしまったのは。
誰のせいでもない、だからこの胸の中のムシャクシャをどうやって逃がしたらいいのだろう。
莉犬くんは、悪くない。誰も。悪くない。
それでも私の心にはドロドロした塊のようなものが詰まっていく。
「わ、わざとじゃなくて、」
「わざとじゃなきゃ、どんなことだってしてもいいの、?」
私の口が勝手に動く。違う、やめて。莉犬くんのせいじゃない。
「ち、違うけど…ごめん…」
「莉犬くんはいつもそう。簡単に謝ってばっかり。謝るだけで、どうにかなるとでも思ってるの?」
このドロドロした塊は刃となって莉犬くんに飛んでいく。
嫌だ。そんなこと思ってないのに。いつだって謝れる莉犬くんは私の憧れで、それで、
どんなに心で思っていても私の口から出るのは正反対の言葉ばかり。
「もう、いいよ。どうせ、このコップだって私だって莉犬くんにとってはどうでもよかったんでしょ?」
「違っ」
「やめて、もう聞きたくない。」
「待って、瑠香、待っ…」
莉犬くんの返事を待たずにリビングを出て自分の部屋に行く。莉犬くんもこんな女に愛想尽かしたよね。
自己嫌悪とやるせない思いに胸が溢れる。
「はぁ、」
笑いに溢れていた生活は今私のため息だけでできているみたいだ。
ひとつ綻びが見つかると、それに引っ張られるように全てが崩れていく。
なんだか、もうダメだな。私は机に向かう。
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亜紀(プロフ) - きゅん… (5月15日 21時) (レス) id: 5c183bf116 (このIDを非表示/違反報告)
さめち@りっちゃんらぶ(プロフ) - りちゅき@さめちゃんらぶさん» しっかり見てるぞ…ついさっきうるっときてたところだった… (5月11日 19時) (レス) id: 03781501d5 (このIDを非表示/違反報告)
さめち@りっちゃんらぶ(プロフ) - まって、めっちゃ心に染みる…これだからさすがびっぐらぶは…(?) (5月11日 19時) (レス) @page40 id: 03781501d5 (このIDを非表示/違反報告)
亜紀(プロフ) - ごめんなさい!りっちゃんも忙しいよね。断って下さい🙇 (5月10日 22時) (レス) id: 5c183bf116 (このIDを非表示/違反報告)
りちゃ - はんのーいいねー!!心ぎゅんぎゅんだよ!!! (5月10日 17時) (レス) id: 2672702b1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/n15a76543b1 作成日時:2023年4月2日 14時