13話 ページ13
トントンは敵の大群を上手くまき、角を曲がる。するとそこには、やけに煌びやかな装備をまとった男が、一人だけ立っていた。
その男は震えた手でトントンに剣を向け、「姫を渡せ、」と声を震わせながら言った。
また敵か、と蹴りを入れようとしたトントンの足は、お姫さまの声によって止まった。
『婚約者、さん』
「へぇ〜。
……そうなんか。
………でも、こいつ倒さなここから逃げられへんで?」
くぐもったお姫さまの顔は、トントンの言葉によって、すっと元にもどってしまった。
『そうね。じゃあいいわ』
躊躇のない、お姫さまの裏切りに、婚約者の男はひぃ、とないた。カタカタと手や肩が震え、目からは涙があふれそうだ。
「こんなへっぽこ野郎が婚約者って、お姫さんかわいそやな。
こんなやつが権力持っとっても、有効活用できへんでー。
……てか、お姫さんのほうがこいつより、何倍も肝座ってるやん」
ーーーそりゃこんなやつと結婚したくないよなー。クソ野郎やもん。
「ひ、や、こ、ここ、殺さないでくれぇ!」
力の抜けた弱々しい声が、婚約者から漏れる。
「って、ゆうてるけど?
どうします、お姫さん?」
『気にしないで。殺してあげて』
慈悲も感じない、凍りついた言葉。
「ハハ、お姫さん、ええな!
まさか、一国のお姫さんから殺してあげて、なんて言葉聞けると思わんかったわー!」
またひぃと声を上げた婚約者は、逃げるように後ろを向いた。
「あ、逃げられへんでー。殺してええ、言われたんや。生きて返すわけないや、ろっ!」
トントンは男の肩甲骨の間につま先を入れる。
防御していたはずの鉄装備は、パキッとかわいた音をたてて、二つに割れた。
割れた鉄と、トントンのつま先が男の背中に食い込む。
そのまま重力に従って倒れていく男の体。
それに逆らうように下から男の首めがけて全力の蹴りを入れた。
男は一瞬だけ宙に浮き、無駄に重い装備と共にパタリと倒れた。
ーーーあーあ。弱いんに自分の権力の為に頑張っちゃって。
ホンマバカやな。
「じゃ行くか」
『ええ』
お姫さまは、濁った、冷めた目で婚約者を睨んで頷いた。
婚約者も無事ボコボコにして、なんとか城内から脱出することができた。
それからは簡単だった。
国の家々の屋根を駆け、ついにβ国を脱出してしまった。
国を脱出したころには、すでに太陽が昇り始めていた。
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煽田 -アオタ-(プロフ) - 瑠璃色さん» あざす! 私の心に抗えず書いてしまった…。(後悔はしてない) (2020年4月25日 23時) (レス) id: 83eb485547 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃色 - 本当最高です!tn推しには堪らんかった…めちゃくちゃかっこよくて勝手に惚れ(て)ました…!凄く面白かったです! (2020年4月25日 23時) (レス) id: c2d58851d0 (このIDを非表示/違反報告)
煽田 -アオタ-(プロフ) - ASAHIさん» 本当ですか!ありがとうございます!かっこよく書けたのか心配だったのでコメントもらえてめちゃくちゃ嬉しいです。! (2020年4月22日 0時) (レス) id: 83eb485547 (このIDを非表示/違反報告)
ASAHI(プロフ) - かっこよかったです…!!めっちゃかっこよかったですよ!!面白かったです! (2020年4月22日 0時) (レス) id: 56ce4f6b01 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:煽田 -アオタ- x他1人 | 作成日時:2020年4月8日 20時