審神者の話【刀剣乱舞】 (ページ8)

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八話ページ8

「ただいまー」
　自室の障子を開けると、中にいた山姥切がぎょっとして書類整理の手を止めた。
「……どうしたんだ。それ」
　両手に抱えた沢山のカーネーションを慎重に棚に置き、審神者はこちらに向き直る。
「朝、皆に貰ったんだけどね。
結構重かったからちょっと置きに来た」
　室内に手頃な花瓶が無いか探している彼女の顔を見て、山姥切は訝しげに首を傾げた。

「何かあったのか」
　ぴくりと肩ごしに反応して、審神者は暗い顔で振り向いた。
「……実はね」

　一連の話を聞き終わると、山姥切は成程と納得した。
そんな彼とは対照的に、審神者はまだ表情を曇らせている。
「皆最近忙しかったから、忘れちゃったのかな。
…まだ新人の子達は知らなくてもしょうがないしね」
　無理に明るい声で取りなそうとする彼女に山姥切は何かを察したのか、軽くため息をついた。

「少し待っていろ」

　歌仙兼定の部屋に赴き短刀達が読んでいた本を貸してくれないかと訊ねたら、勿論と言って快く渡してくれた。
「読んでみろ」
ぽん、と審神者に手渡すと、パラパラとページを捲る。
ふと折り目がついているページで手を止めると、刀剣達から貰った、彼女のよく知っている花が載っていた。

「…赤は『母の愛』。白は『尊敬』、紫は『気品』。
……ピンクの花言葉は『感謝の心』…？」
　目を見開く審神者に山姥切はいつもと違う優しい口調で語りかける。
「……1週間くらい前に、短刀達が騒いでるのを聞いていたからな。長谷部にも言われた」
　彼は静かに続ける。

「…誰も、あんたの記念日を忘れたりしないさ」