ソクミン君は歌う

恐ろしい乙女 ページ37

破顔仕切った彼女の顔がこれ程かと近付いて、形の良い唇から放たれた言葉は、私の頭の中を真っ白になるには十分であった。









hy「 私気付いたの ！否、確信だわ！








＿＿＿＿ 最近貴女がよく足を運んでいる場所を 」





オブラートに包むこと無く容赦なく放たれたソレに、瞬間、彼女と距離を取った。


抜かりなく実行していた筈なのに ･･･ 。





「 な、ぜ それを ･･･ 」


何か、何でもいいから申さなければ。

然し思わず喉から出た声は自分でも驚くほど情けなく、キーキーとしていた。




事実であると悟るには充分であっただろう。



hy「 成程。黒ね 」



フフっと妖艶に笑う彼女に今抱くは恐怖しかない。頭に浮かぶのはソクミンくんが無事なのかというものばかりである。



目の前の彼女以外も知れ渡っていたら、私自身愚か、ソクミン君にまで影響を及ぼす事は目に見えている。だからこそ抜かり無いようにしていたのに。



少しの沈黙が走った。


それを破ったのは彼女の意外にもこの状況に相応しくないような落ち着いていてそれで柔らかな声だった。


彼女はAのシーツを皺にしている死人のように白い手に自身の手を重ねて言ったのだ。



hy「 ･･････A、貴女が考えているような事は起こっていないわ 」




結局、彼女を侮っていた私の方が精神が幼かったらしい。




Aを見つめる黒曜石の双眸は温かかった。



hy「 貴女、私と言う最強のパートナーを残してさっさとアノコの方へ行っちゃうもの。嫉妬しちゃうわ？」





'' だって私はお友達でありオンニでしょう？''




__完敗だ。緊張が音を立てて崩れた。




「 いいの、？」



事がバレてしまえば彼女の立場は危ういどころか職を失うであろうに、当の本人はどこ吹く風、ビー玉のようなキラキラとした瞳で見つめてくる。





hy「 ええ！勿論！でも、アノコとどういう関係？！まさかボーイフレンドだったりして ！」



瞬間、堰を切ったように爆弾を落とした彼女に瞬時に一喝。直ぐ恋愛に持って行くのだから。


この際彼女がどうやって私達の接点を見つけたのかどうでもいい。






私としては何故この人がここまで強情なのか、その理由が知りたくてたまらない。







目の前で乙女のようにはしゃぐ乙女はどうも本心を見せる気はさらさら無いようだ。


__掴めない。これからどう探りを入れようか、今のAはその事しか考えていないようだ。

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