・ ページ26
side MINA
「だからあのふたりなら、大丈夫」
「……」
「まぁ、もしそんなことがあればさ。その時は一緒にジェヒョンの頰引っ叩かないと」
「怖ぇ」
そう言ってスーチョンはゲラゲラ笑う。
『何、俺も混ぜてよ』
グラス片手にこちらへやってきたジェヒョン。ジェヒョンの行く先を追うようにこちらを見ていたスヨンちゃんと目が合い、少し気まずい。
「ジェヒョンはこっちこないでよ」
「お前から逃げてきたのに」
『それが友達に対する態度か？』
私とスーチョンの口撃に呆れる様子のジェヒョン。
「お前がいると落ち着いて酒も飲めない」
「そうだよ。みんなが憧れるジェヒョンオッパの周りにはいつも人が集まるから……。私たちと飲んでいただけるなんて…グスッ…」
『……お前たちだけは味方だと思ってたのに。最低だ…』
揶揄うように泣き真似をすると大きなため息を吐いて目頭をおさえるジェヒョン。二年生になってからこうして三人で飲むのは意外にも初めてだった。それから私たちは昔のようにくだらない話ばかりしていた。思いついたことをみんなで適当に話すからいつも会話にまとまりがなくてとっ散らかる。振り返っても何を話していたのか思い出せないほどだ。中身のない話をしていてもそれがひどく楽しい。だけど、Aがいたらもっと楽しいのだろうと思う。
結局ジェヒョンは元にいた席には戻らずに、終電近くまで三人で話し込んでいた。時折スヨンちゃんはこちらを眺めていたけれど、入る気にはなれなかったようだった。
「次はAも連れてきてね」
『うん、言っとく』
「じゃあまた」
「バイバイ」
改札前でジェヒョンと別れる。後からその後ろ姿を追いかけるスヨンちゃんが見えた。……Aに連絡した方がいいのだろうか。でも、ただ同じ方向なだけかもしれないし。一緒に帰ったとしても、きっとジェヒョンなら大丈夫だよね。
そう言い聞かせ、開いたアプリを閉じて、階段を駆け上がる。
その瞬間、春の終わりを告げる生温い風が強く吹いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 739人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ruko(プロフ) - 奈胡（元jen）さん» 前回もコメントいただいてましたよね、本当に嬉しいです😭お忙しい中ありがとうございます。意識している世界観を汲み取っていただき…♡嬉しいです✊🏻 (3月24日 18時) (
レス) id: 683ee61126 (このIDを非表示/違反報告)
ruko(プロフ) - おもちさん» そう言っていただけて嬉しいです😭😭お優しいお言葉ありがとうございます♡ (3月24日 18時) (レス) id: 683ee61126 (このIDを非表示/違反報告)
ruko(プロフ) - ナオさん» コメントいただきとっても嬉しいです。そう言っていただけると活力になります、ありがとうございます☺️ (3月24日 18時) (レス) @page50 id: 683ee61126 (このIDを非表示/違反報告)
奈胡（元jen）(プロフ) - こんな風に優しくて平和で穏やかなストーリー、癒されまくっています 普通の恋人同士なのにすごく素敵 続きも楽しみにしています (3月16日 2時) (レス) @page50 id: 8b083b7e19 (このIDを非表示/違反報告)
おもち(プロフ) - 1から更新されるたびにわくわく、どきどき、きゅんきゅんした気持ちで読ませてもらってます♡これからも楽しみにしてます！ (3月16日 0時) (レス) @page50 id: db91ee34e8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ruko | 作成日時：2024年1月29日 22時
