・ ページ21
「今日ミナと話してたの。１年前が懐かしいねって」
夜風が頰を切って髪を揺らす。夜はまだ少し風が冷たくてジェヒョンの温かな体温を求めて身を寄せた。
「私とジェヒョン、あの時は友達ですらなかったんだよ。私は途中で帰って、ジェヒョンは残って。……なのに今はこうして一緒に手を繋いで帰ってる。ふふっ、何があるかわかんないもんだね」
『確かに、懐かしいね』
ジェヒョンは繋いでいない方の手で私の目の下を親指の腹で優しく撫でる。思い出をなぞるようにああだこうだと言いながら並んで帰る夜。ジェヒョンの左腕には誕生日に贈ったブレスレットが。私の右薬指にはクリスマスにもらった指輪が光っていた。
『あ、アイス買って帰ろうよ』
「いいね」
『何がいい？』
「今日は私が奢るよ。ジェヒョニが頑張ったから」
『……うわぁ、Aオッパ。愛してます…』
今の、感動したんだけど？そう言ってジェヒョンは繋いだままの手を胸に当て、心臓を抑えた。
近くのコンビニでアイスを買う。私は決まってチョコがコーティングされたバニラアイスで、ジェヒョンはいつもコーン付きのアイスだ。ちょっとお高いアイスにする？と提案したけれど手を繋いで食べられないアイスは嫌だとかで頑なに買おうとしなかった。
深夜、アイスを食べながら手を繋いで歩くことは至極尊いことだとジェヒョンが教えてくれた。舌の上で甘くとろける。横を見上げるとジェヒョンがいて、手を繋いでいつもの道を歩く。一口いる？と聞くと、ジェヒョンは返事もせずに私の口を味わうようにキスをした。そういう意味じゃないけどな、と思いながらもジェヒョンは満足そうにこちらを見ていて。それから私がアイスを食べる度に同じことをした。
私は背伸びをしてもジェヒョンの唇には届かない。ジェヒョンが少し屈んで顔を傾けてくれないと届かないのだ。けれどジェヒョンはいとも簡単に私の唇に届いてしまう。狡いなぁと思う。私だってもっとジェヒョンを翻弄させたいのだ。もうずっと心臓が締め付けられていて、全身に甘い毒がまわっているようだった。
まわってまわって、すでに致死量。
月明かりの下、私たちの並ぶ影がひどく愛おしい。
家まではもうすぐそこだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 738人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ruko(プロフ) - 奈胡（元jen）さん» 前回もコメントいただいてましたよね、本当に嬉しいです😭お忙しい中ありがとうございます。意識している世界観を汲み取っていただき…♡嬉しいです✊🏻 (3月24日 18時) (
レス) id: 683ee61126 (このIDを非表示/違反報告)
ruko(プロフ) - おもちさん» そう言っていただけて嬉しいです😭😭お優しいお言葉ありがとうございます♡ (3月24日 18時) (レス) id: 683ee61126 (このIDを非表示/違反報告)
ruko(プロフ) - ナオさん» コメントいただきとっても嬉しいです。そう言っていただけると活力になります、ありがとうございます☺️ (3月24日 18時) (レス) @page50 id: 683ee61126 (このIDを非表示/違反報告)
奈胡（元jen）(プロフ) - こんな風に優しくて平和で穏やかなストーリー、癒されまくっています 普通の恋人同士なのにすごく素敵 続きも楽しみにしています (3月16日 2時) (レス) @page50 id: 8b083b7e19 (このIDを非表示/違反報告)
おもち(プロフ) - 1から更新されるたびにわくわく、どきどき、きゅんきゅんした気持ちで読ませてもらってます♡これからも楽しみにしてます！ (3月16日 0時) (レス) @page50 id: db91ee34e8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ruko | 作成日時：2024年1月29日 22時
