64話 知りたいから、それだけ？ ページ17
コンコン、ヴォックスがAの部屋の扉をノックするが、中から反応は無い。
「アー……A？入っても？」
そう聞いてもやはり反応は無い。ヴォックスは仕方なくドアノブに手をかけ、そのまま部屋の中に入った。
中は暗く、ベッドのすぐ横に蹲っているAの姿が見えた。
「(……泣いているのか？)」
そう思ったが、どうやら少し違うらしい。時折肩が震えているから、嗚咽を堪えているようにも見えた。
「出てって、ヴォックス。明日には良くなるって言ったはずだよ」
「そうは見えない」
「出てって！！」
声を荒らげ、Aは枕をヴォックスに向かって投げた。それを受けとめる。
「こういう癇癪はヴァルだけかと思っていたが」
「うるさい。出てって」
「嫌だと言ったら？」
「……お願い、出ていって……」
「はあ。なぁBaby、何があったか、私に聞かせてくれないか？力になれるならなんだってするから」
「話したくない。生前のことなんて」
生前のことなんて、と言い捨てるAにヴォックスは眉を顰める。知り合ってからのAのことはそこそこ知った気でいるが、生前のことになるとてんでわからない。そもそも彼女と彼では死亡した年すら違うのだ。
とはいえここまで来てすごすごと帰るというのもヴォックスのプライド的な何かが許さない。
ヴォックスはベッドに腰掛けると、Aを自分の方に向かせて抱きしめた。
「生前関わりがあった奴とでも会ったか？」
「……」
ヴォックスの胸元に顔を埋めているAからまた反応が無くなる。
「(ドンピシャか)」
「……妹が、いたの」
「ん？」
「私のどうでもいい世界の中で唯一鮮やかだった、かけがえのない妹がいたの」
「会ったのはその妹か？だとしたら君がこうなってる理由がわからないな」
「……会ったのは、少し遠い親族。妹を殺しかけたクソ女」
「そうか。もう話さなくていい。私も無理に聞くような真似をして悪かったよ。君を知りたかったんだ。君が何に苦しみ、何に悲しむのか」
「……ウサンクサ」
ヴォックスがAの頭を撫でた。
少しの間そうしていると、ヴォックスに連絡が入る。それを己のスマホに移し、話を聞く。
「面接者？面倒だが仕方ない、行ってくる」
「……ヴォクシィ」
「なんだ？」
「ありがと」
小さく礼を言って、Aはヴォックスを見送った。
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ツバキ(プロフ) - 面白すぎて一気見ました！！ハズビンホテル感の多い作品ってあまり見かけないのでめちゃくちゃ嬉しいです！最高です更新楽しみにしてます！ (4月2日 8時) (
レス) @page17 id: 340cc653a8 (このIDを非表示/違反報告)
カガリビ(プロフ) - ちゅけさん» コメントありがとうございます！月末は更新が滞ってしまうので気長に待ってくれると嬉しいです🫶 (2月26日 17時) (レス) id: 0b61587847 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅけ - わわ...続きが気になります..!ハズビンホテルでクオリティの高い作品は数少ないと思うのですが、この小説はめちゃめちゃ読みやすくて面白いのでハマってしまいました☺️更新待ってます！ (2月26日 1時) (レス) @page15 id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
カガリビ(プロフ) - いちご丸さん» またまたコメントありがとうございます。続編からはヘルヴァボスもどんどん出していくつもりです😎どうぞお楽しみにしていてください🫣 (2月21日 17時) (レス) id: 0b61587847 (このIDを非表示/違反報告)
いちご丸 - 殺し屋やってるインプって・・！ブリッツじゃないですかーーー！！！まさかスピンオフの方まで見ていらっしゃったとは・・！こういう小ネタ？テンション上がります笑 (2月21日 17時) (レス) @page6 id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カガリビ | 作成日時：2024年2月20日 23時
