陽炎 (ページ7)

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翌日、数学の授業。

教室に入ってきた先生の
いつも見ているあの、きれいな手に

"え！？先生結婚するの！？"

左手の薬指
シルバーのリング。

私のすべてがくずれ落ちる音がする
それ以外何も聞こえない。

やだ、聞きたくない、誰かのものになるなんて。

先生が私のためだけにしてくれてた補習の時間も
先生がくれた淡い期待を抱かせるような温もりも全部

全部、
こんな結末のためにあったの？

がやがや騒ぐ生徒たちもそれを静める先生も

違う世界にいるみたいで、

私だけが取り残されたみたい。

耐えられなくなった私は遂に
何も考えず教室を飛び出した。

..
..

足が行くままに歩いていたら
着いた先は屋上だった

思い出したくないのに忘れたくなくて
嫌でも先生のあの匂いが私の胸を締めつける。

目の端から溢れる涙を拭う気力さえなかった。

私は特別だと思ってた。
他の生徒とは違うと思ってたのに。

「A、！」

こんな時でも
見つけてくれるのはやっぱりジフン先生がよくて、

たぶん、授業を放って私を探しにきてくれた先生に
懲りもせず胸はときめいてしまう。

「…なんでくるの、」

口をついて出た言葉は
先生を突き放すようだった

「泣いてると思って」
「……先生のせいなのに」

先生の考えてること、全然わかんない。

曖昧に優しくしたりしないでよ。

「A」
「…もう、なに、」
「Aは俺の生徒だよ。それ以上でも以下でもない」

こんな時まで先生は
やっぱり先生でいようとする。

「じゃあ、私は他の生徒と少しも違わなかった？」
「…え？」
「私のこと少しでも、特別に思ったことは一度もなかったの？」

私はやけくそになって先生の方を見る

するとその目には
僅かに涙が滲んでいた。