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「はぁ？あんたよりマシなんだけど」
「ちがう、そういうことじゃない」
「意味わかんない」
いつものように言い合いに発展する。
ここに他のクラスメイトがいればいつものように「おまえら仲良いな〜」って笑ってもらえるんだけど、今は他に誰もいないから若干気まずい雰囲気になってしまう。
「…Aはさ、好きなやついんの？」
「なんで？」
「好きな人には一途って」
「…いないこともない」
「何だよそれ」
「ハルトには関係ないでしょ」
「なぁ、それ。いつもそうやって壁作るじゃん」
壁作るもなにも、
ハルトが変わっちゃったんでしょ。
「お前が好きなのは俺だと思ってたんだけど」
「っ、は、？」
「違う？」
悪気もなければ揶揄ってるわけでもなく、ただ本当に気になってる、という表情で私の顔を覗き込んでくる。
「答えないならキスするけど」
「な、…」
ハルトの言葉に動揺する私と
お構いなく近づいてくる彼の顔
こんな望んでないような形でも、やっぱり期待してしまってる自分がいて
ハルトの唇が私のそれに触れそうな瞬間、私はゆっくり瞼を閉じた。
「なんで抵抗しないの」
「っ、…」
「やっぱ好きなんでしょ？俺のこと」
結局キスはせずに お互いの唇が触れるか触れないかくらいの距離で話してくるから、その感覚に肩がびくりと跳ねる。
それを見たハルトは、ふっと笑って顔を離した。
自分ばっかり私のこと知ろうとしてきてずるい。
ハルトこそ、私と壁作るみたいに
自分のこと教えようとしないくせに。
「ずるい」
「…ん？」
「はるとばっかり、ずるい」
「おいっ、…」
もうどうにでもなっちゃえ。
やけくそになって、椅子から立ち上がりハルトの肩に手を置くと自ら彼の唇に自分のを重ねた。
「ふ、わかったよ」
「…？」
「Aが俺のこと好きらしいから、他の女全員切る」
「え、？」
キョトンとしてる私を置いてけぼりにするように
ハルトは立ち上がって私を引き寄せ、さっきより長いキスをしてくる。
「ん、…ま、って、」
「なに？」
「ハルトは…私のことどう思ってるの？」
教室の窓から差し込むオレンジの光が、ハルトの瞳に透き通っていく。
長いまつ毛の影が頬にかかるのを見つめながら、彼の言葉を待った。
「俺はずっと好きでしょ。気づいてなかったのAくらいだと思うよ」
平然と答えるハルトに、開いた口が塞がらなかった。
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作者名：藍 | 作成日時：2023年11月1日 14時
