検索窓
今日:5 hit、昨日:9 hit、合計:38,001 hit

肆話. ページ4

*


再び目が覚めれば、「お早うございます。」と声をかけてくれたのは柔らかな声の人だった。

『...お早う、ございます。』と、掠れてはいたものの声が出た時は、「うわぁぁん、良かったァァァ!!」と太陽のような声の人があたしの足元に伏せって泣いた。


それから一頻り泣いた彼女は「私は、甘露寺蜜璃!川辺で倒れていた所を発見して、ここに連れてきたの。」と愛らしい笑顔を向けてくれた。

続けて「私は胡蝶しのぶです。貴女のお名前は?何があったか覚えていますか?」と少々矢継ぎ早に聞いてきた。



『ァ...なま、え。あた、しの。名前...』



あれ?あたしの名前、何だったっけ?

そもそも、何故あたしは甘露寺蜜璃さんの言う通りならば、川辺で倒れていて、ここに来たのだろう。

嗚呼、痛い。思い出そうとすると頭が痛い。まるで鈍器にでも殴られたようだ。



「しのぶちゃん、もしかしてこの子...」

「ええ、困りましたね...」



痛む頭に伸ばす腕さえも、未だ骨が軋むように痛い。

記憶の箪笥をひっくり返せば頭痛は酷くなる一方で、けれど、2人が自己紹介をしてくれたのだから、あたしもせめて自分の名前だけでも言いたかった。

よもや意地ではあった。



「とりあえず、彼女を見つけた時の状態を...」

『...A』

「「え?」」

『あたし、の、名前...A』



自分でも驚いた。

胡蝶しのぶさんも、甘露寺蜜璃さんも、少しばかり目を見開いたが、多分あたしはそれ以上だった。

痛む頭で精一杯思い出していれば、ふと、「A」と誰かに呼ばれたような気がしたのだ。


その声もまた、とても柔らかくて、とても優しくて、嘘をつけない真っ直ぐな声をしていた。


その声に何度も何度も「A」と呼ばれていたような気がして。


ズキッと酷く頭が痛んだ瞬間、目を硬く瞑れば、顔こそ見えなかったものの、耳元に花札のような飾りをつけた人が「A」と、こちらに向かってそう言うのだ。

其れがあたしの名前だと、本能が叫んでいた。そして次にはもう、2人の前であたしは呟くように言った。


*

伍話.→←参話.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (67 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
306人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 竈門炭治郎
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

にこにこまるる - 面白いです!今後の展開が楽しみだな〜☺️ (12月3日 10時) (レス) @page30 id: aba63dfe7c (このIDを非表示/違反報告)
- 続きが気になっていたのに読むことが出来なくなってしまって残念です。。。 (5月12日 0時) (レス) id: 361e8a8309 (このIDを非表示/違反報告)
- こんばんは(*^^*) 夜分遅くにすみません。。。 全く関係ない所にコメントしてしまいすみませんm(._.)m 名探偵のかわいい妹ちゃん【名探偵コナン】は パスワード制になってしまったのですね(._.) (5月12日 0時) (レス) id: 361e8a8309 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:なこ | 作成日時:2023年4月6日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。