弐拾弐話. ページ23
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『大変お見苦しいものをお見せしました。』
「いや、泣き止んでくれて良かった。」
ズビッと鼻をすすれば、隣に座る竈門炭治郎くんは安心したように微笑んだ。
よしこよしこ、と頭を撫でられ、またも心の内がザワザワと騒ぎ出したけれど、最初のような不快感は無くなっていた。
……ので、自身の境遇に改めて整理を付けようと思い立ったので、懇切丁寧に竈門炭治郎くんに己の事を説明する。
まず大前提、というより第一に、あたしには3年前よりさらに昔の記憶はほぼ無いに等しい、という事。
何故にほぼ、という曖昧な言い方をするのかと言われれば、その答えは『あたしがAと自己紹介が出来た』からだ。あとは、自身の歳も理解出来ている所もあったから。
しのぶさまにも、一時的な記憶の閉鎖、と言われていたので今後ポッと思い出すやも知れないので、そう説明した。
次に、蜜璃さまに川辺で倒れていた所を救われたこと、彼女の背中を追って鬼殺隊に入ったこと、周りの手助けもあり柱にまで登り詰めた事などなど
これも懇切丁寧に説明してあげた。
正直、何故自分が彼にここまで内情を打ち明かさなければならないのか、とは思った。
けれど、どうやら彼は『昔のあたし』を知る人物であり、何より近しい存在っぽかったので打ち明けた。単純ではある。
記憶を取り戻したい、と思ったことは1度もなかった。
自分の目指すものに向かって日々努力して、己のやるべき事を全う出来るならそれでいいと思っていた。
明日顔を合わせることが出来ないかもしれない、なんて不安を拭うように、一日を丁寧に生きて行ければそれでいいと、今でも思ってる。
だけど、あたしを見つめる彼の瞳が、イヤに真っ直ぐで大事なものを見るような其れだったので、過去の自分に興味が湧いたのもまた事実だった。
事の全てを話終えれば、竈門炭治郎くんは再びあたしの手を握った。
「忘れてしまっていても構わない。もう一度、ひとつひとつ思い出を作っていこう。」
改めて見る彼の顔は、まあ整っているなぁ、と思った。
なんか、言ってることカッコイイなぁ。旦那さんだったのかな。いいや、恋人か?そんな訳ないよね、あたしまだ若いもん。
などと馬鹿げた思考を全力で頭の中で回したけれど、内心というか、心臓はバックバクのドッキドキである。
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にこにこまるる - 面白いです!今後の展開が楽しみだな〜☺️ (12月3日 10時) (レス) @page30 id: aba63dfe7c (このIDを非表示/違反報告)
游 - 続きが気になっていたのに読むことが出来なくなってしまって残念です。。。 (5月12日 0時) (レス) id: 361e8a8309 (このIDを非表示/違反報告)
游 - こんばんは(*^^*) 夜分遅くにすみません。。。 全く関係ない所にコメントしてしまいすみませんm(._.)m 名探偵のかわいい妹ちゃん【名探偵コナン】は パスワード制になってしまったのですね(._.) (5月12日 0時) (レス) id: 361e8a8309 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なこ | 作成日時:2023年4月6日 23時