拾話. ページ11
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半年ぶりの柱合会議だった。
蜜璃さまは勿論、あたしを含めた総勢10名の柱は、鬼殺隊本部であるお館様の御屋敷にあるお庭へと集まった。
以前、あたしが柱として就任した際に紹介された場だった。
お庭にある、大きなお池があたしは好きで、側に立つ木に登っては其れを眺めるのと、やわらかい風を肌に感じるのが好きだった。
なので、今日も漏れなく木に登り、大きな幹に背を預けた。
いつも通り、お館様がいらっしゃるまでの間だけれど。
しかし、いつも通りとは言ったが異なる点は幾つもあった。
1つ目、あたしが見下ろし視線を注いだのはお池では無いこと。
2つ目、いつも無口で多くを語らない水柱さまこと冨岡さまは、いつも以上に皆さまとかけ離れた場所に突っ立っていること。
3つ目、柱では無いひとりの男の子が、皆さまの前に縛られ地べたに伏せていること。
4つ目、その男の子があたしを視界に入れた途端、声にならない声をあげて、身じろいだこと。…これはあまり「いつも通り」、には関係ないのかもしれないが。
身体中ボロボロで、それはそれは目も当てられないほどに傷ついて。
あたしに何かを言いたげに口を開けては、容赦ない柱のみなさまの質問攻めにほとほと困り果てている。
滑稽、と他人事程度に思ったものだ。
その男の子の傍に膝をつき、まるで監視するかのように居座る隠の方もご苦労なことだ。
しかしながら、余裕ぶるにも少しばかり無理があった。
地べたに伏せて為すすべもなく、情けない彼にどうしようもない懐かしさを覚え、胸の内を掻き乱される感覚に襲われたからだ。
風に揺れる花札の耳飾りが、1層あたしを混乱に陥れようとした。
酷い頭痛の後に、脳裏で垣間見えた「A」と呼ぶ記憶にない思い出の中の人。
その人物もまた、目の前の彼と同じ花札の耳飾りを揺らしたが故に、平静を保つのも一苦労だ。
「なんとか言ったらどうだ、冨岡。」
ふと、伊黒さまの一言であたしの気は現実へと引き戻された。
答えの見つからない思い出に、軽い頭痛を感じて、不快になったものの、あたしは木から器用に降り立ち、蜜璃さまの隣へと肩を並べた。
「伊黒さん、相変わらずネチネチして蛇みたい!しつこくて素敵…!!」などと思っていそうな我が師範は相変わらずだ。
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にこにこまるる - 面白いです!今後の展開が楽しみだな〜☺️ (12月3日 10時) (レス) @page30 id: aba63dfe7c (このIDを非表示/違反報告)
游 - 続きが気になっていたのに読むことが出来なくなってしまって残念です。。。 (5月12日 0時) (レス) id: 361e8a8309 (このIDを非表示/違反報告)
游 - こんばんは(*^^*) 夜分遅くにすみません。。。 全く関係ない所にコメントしてしまいすみませんm(._.)m 名探偵のかわいい妹ちゃん【名探偵コナン】は パスワード制になってしまったのですね(._.) (5月12日 0時) (レス) id: 361e8a8309 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なこ | 作成日時:2023年4月6日 23時