狐の威嚇 2 ページ2
久しぶりに乗る電車は夕方という事もあり、随分空いていた。
空いている席に腰掛け、スマホのメッセージアプリを開き、Aからの返信を見る。
『大丈夫だよ。改札口で待ってるね』
実は、撮影が少し押してしまい到着が遅れてしまいそうなのだ。
ジュナが、Aさんにごめんなさいって謝っておいてと言われたが、ジュナのせいではないし、遅れると言っても10分やそこらなのだが、まぁ、なるべくAを1人で外に待たせたくないのが本音。
もし、変な輩に絡まれでもしたら……
想像するだけで無意識に拳に力が入ってしまう。
『ごめん。なるべく急ぐから人通りの多い所に居て』
そうメッセージを送ると白猫がグーサインをしているスタンプが送られてくる。
自分が幾ら焦ろうとも、電車の到着時間が早まる事は無いので、大人しくスマホを弄ったりして待つ。
あ、カフェ探すの忘れてたな
ジュナが休みの間ずっと頬をツンツンしてくるもんで集中して調べられなかった。
まったく、幾つになってもジュナはジュナだな
呆れつつも構って貰えてちょっと喜んでしまっている自分が居るのは否定できない。
散々突かれた頬をマスクの上から擦りながら、カフェを検索する。
んー、何処が良いだろ。Aはお腹空いてるかな、小腹も空いたから軽く食べれる所でも良いし…
なんて、色々考え込んでいると目的地の駅に着き、ホームに降りる。もうすぐ着く事を知らせて、急ぎ足で改札へ向かう。
電子マネーで切符代を支払い改札口を通ってAを探せば、地下鉄特有の景色を前に以前ライブでプレイしたゲームを思い出す。
あんな感じのおじさんが居たらどうしよう
なんて考えながらキョロキョロと辺りを見渡すと、少し離れた通路で壁に貼られたポスターを眺めているAの姿を見つけた。
……なんか、あそこだけ春が来たみたいだな
俺が撮影帰りと知っていたからか、Aもメイクをして、いつものラフな格好より少し綺麗目な薄水色のロングコートに白いタートルネックセーター、下は珍しく長めのスカートを履いていた。
グレー一色の地下通路でAにだけ色が着いているように見えて、それがまるで花が咲いている様に見える。
それに、事前に話し合っていた訳でも無いのにお互いに似たコーデになっていて何気に嬉しかった。
やっぱり、Aって綺麗だな
思わずスマホを取り出しカメラを向ける。
パシャっとシャッターを切った瞬間、Aの傍に見知らぬ男性が近づいてきた。
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作者名:NOAH | 作成日時:2024年3月13日 23時