10.反響 ページ10
番組が放送された次の日のコメント欄は、今までにないくらい荒れていた。
むしろ初めてって言っていいくらい。
黙ってコメント欄をスクロールさせていく。
*
××× 1時間前
ゆずちゃんの夢が叶ってよかったね
ずっと風磨くんに会うために頑張ってたんだもんね
↓
××× 1時間前
ほんとそれな!
こっちまで泣きそうになった!
↓
××× 30分前
アンチ増えそう(笑)
××× 1時間前
ゆずちゃんのこと応援してたけど
番組に出演したわけじゃないのに コネで入れてもらって 風磨くんに会うのってどうなの
なんかそれってズルいなって思う
↓
××× 1時間前
そのためにYouTuberやってんだから当たり前
↓
××× 1時間前
番組に出るならわかるけど、そうじゃないのに入れてもらってっていうのがなぁ。
それって自分で夢叶えたことになるん?
↓
××× 30分前
この子にしてあげようって思ってもらえるのも努力だと思う
*
正直、自分でも悩んでいた。
「自分で夢を叶えたことになるのか」
私はズルをしたのかな。
自分の行動の善し悪しがわからなくなっていく。
自分の中のあらゆる角度の主張がそれぞれを 牽制し合って
「自分の本当の考え」が一体どれなのかわからない。
自分の意思が弱いことだけが揺るぎない事実で
それが私に重くのしかかってきた。
何も考えられなくなって、ベッドに突っ伏す。
ヴー、ヴー
現実と一緒に閉じたばかりのiPhoneが振動し
私に電話を知らせる。
着信:ななこちゃん
UUUMの食事会で意気投合したYouTuberさん。
歳も近くて 気さくに話してくれて、
知り合ってから何度か プライベートでご飯に行ったこともある。
炎上のこと知って電話くれたのかな…
もしそうだとしても、元気の無い姿は見せたくない。
一呼吸置いて、画面をスライドさせ iPhoneを耳に当てる。
「もしもし?どしたの?」
『もしもしっ、いきなりごめんね!
東京きててね〜、急だけど今からご飯行かない?って思って 』
「へ?今東京来てるの?
じゃあ…せっかくだし行こっかなぁ、」
結局ななこちゃんの口から今回の件についての話が出ることは無くて、少しほっとした。
1人家にこもって考えたって 思考がマイナスになるだけだよな
と誘いに応じ、集合場所や時間を決め 電話を切った。
今からメイクして、ヘアセットして…
考えが分散されて、一時的でも 気持ちが少し楽になり ななこちゃんに感謝した。
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作者名:そらはる | 作成日時:2019年1月21日 1時