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何事も無かったように進む撮影。

話題もとっくに変わっている。


あれだけ熱心に見つめていた風磨くんの顔も



「ゆっくりでいいよ」


その言葉を思い出し、上手く見れなくなっていた。


もっともっと伝えたいことがあったのに
上手く伝えられなかったことへの後悔が徐々に心を支配していく。



悶々としている内に撮影は終盤に差し掛かり

二度と訪れることのないこの空間の
終わりを告げようとしていた。


何も出来ないまま、もう一生会えないかもしれない。

頭に浮かんでは消える考え。

考えたって、撮影中の今はどうすることも出来ない



きっとそうして逃げている。


『撮影中だから』

じゃあ撮影が終わったら?

『迷惑だから』? 『時間が無いから』?


きっと私は なにか理由をつけて動かないんだろう

そんな自分が嫌で、変わろうと思って、またとないチャンスを掴んだのに

やっぱり頭では『動かない理由』ばかりを無意識に考えてるんだ






「はい!オッケーです!」


「お疲れ様でした〜〜」






スタジオ内は労いの言葉が飛び交い

閉められていたドアがスタッフの手によって開けられた。


挨拶を済ませた順に スタジオから1人2人と出ていき、
先程まで活気づいていたスタジオに響く声も少なく 少し寂しげな空間に思えた。



ヒカキンさんは タレントさんと少し話をしているようで こちらに歩いてくる様子はまだ見られない。






ねぇ、もう撮影終わったよ。

風磨くんと話せる時間、もう一生ないかもしれないんだよ。





わかってる、わかってるよ、でも…

…自信も、勇気もないんだ…








伏せていた目を少し上げて 風磨くんを探す。

丁度 挨拶を終えたらしい その足がドアの方向に向いた。



急な焦りで心臓がバクバクうるさい

名前を呼べばきっと気づいてくれる


勇気出せ!って口を開けても 声が出ることは無くて

不甲斐ない自分が悔しくて
引っ込んでいた涙が また目に溜まった。









時間が、止まったように感じた。









見つめていた背中が

不意に振り向き





また、目が合った。





「ありがとね」


振り向きざまに発した、私への言葉。


瞬きも出来ない私の目から 一筋の涙が伝った。





今日は朝から いつもの倍の時間をかけてメイクして

お気に入りの服を着て

髪も綺麗にセットして

1番の私でここに来た。

全部、風磨くんのために。



再び歩き始めた背中を気づけば呼び止めていた。


「あの…っ」

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設定タグ:菊池風磨 , ジャニーズ , SexyZone   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:そらはる | 作成日時:2019年1月21日 1時

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