Dress*11 ページ13
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｢翔太くん､待ってってば｡｣
｢っ､ごめん｡｣
Aさんの声が聞こえて､強く握りすぎていた手を離す。
無我夢中で歩いて､必死にあの人から離れた。
Aさんと一緒にいると時間が経つのがあっという間なのに､今日はいつもより長く感じる。
なんで？
その答えなんて考えなくても分かる。
分かるけど､今は受け入れたくない。
｢どうしたの？今日は会う約束してなかったから､こんなとこで偶然会うなんてびっくりしちゃったよ｡｣
そう言ってまた困った表情をする。
そんな顔､してほしくないのに。
｢約束してなきゃ会えないの？｣
｢そんなことはないけどさ､｣
｢あの人…誰？｣
｢あの人？｣
｢Aさんはやっぱりああいう大人っぽい人が好きなの？俺みたいなやつより､年上の方が好み？｣
だめだ。
話し出したら止められない。
こんなこと言って嫌われたくなかったのに。
わがままなやつだって思われたくなかったのに。
今までずっと言わずに我慢してたのに。
これまでの努力が全部台無しだ。
｢年下なんか頼りにならないし､包容力もないし､一緒にいてもつまんない？｣
これ以上言ったらだめだって､困らせるだけだって分かってるのに。
心の中で思う言葉とは真逆のことばかり口にしてしまう。
止めたいと思うほど止まってくれない。
お願い､Aさん。
お願いだから､俺のこと嫌いにならないで。
俺を見捨てないで。
そんな目で見つめないでよ。
俺はこんなにもAさんことが好きなんだよ。
だから､そんな悲しそうな顔しないで。
いつもみたいに笑っててよ。
｢翔太くん､｣
｢Aさんは俺のことなんかもう好きじゃないの？｣
｢翔太くんストップ！｣
久しぶりに聞く大きな声に驚いて顔を上げると､すぐ傍にAさんの顔があった。
その距離にドキドキしてしまう自分が恥ずかしい。
やっぱり俺はAさんが好きなんだなって感じてしまうから。
｢何か勘違いしてるよ｡｣
｢勘違い？｣
｢さっきの人は中村さんっていう私の先輩だよ｡ただの上司だから｡｣
｢でもなんでさっき一緒にいたの？｣
｢それは…｣
言葉に詰まる様子を見て､嫌な予感が頭をよぎる。
｢俺に言えない理由なの？｣
｢さっき一緒にいたのはね､翔太くんのためなんだよ｡｣
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作者名：夏目 | 作成日時：2024年3月17日 21時
