Call*1 ページ3
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新学期になって2週間ほど経った頃､初めて日直が回ってきた。
日直の仕事は普段はあまりないはずなのに､今日に限って沢山ある｡
放課後にわざわざ残ってプリント整理なんてしたくないのに｡
早く家に帰りたい。
こういう時､俺はいつも運が悪い。
｢目黒くんってさ､かっこいいよね｡｣
｢……え？｣
俺なんかとペアを組まないといけなくなって､きっと向こうも運が悪いと思ってるんだろうな｡
なんてことを考えていると､突然そんなことを言われた。
“かっこいい”なんて言われ慣れていなくて､思わず手を止めて顔を上げた。
｢あ…いや､ごめん！急にこんなこと言って気持ち悪いよね｡今の発言はなしで！
…っていうのも失礼か､実際に目黒くんはかっこいいんだし｡どうしたらいいのかな…えーっと､｣
俺の目の前で今こうしてあたふたしているのは､前の席の村瀬さん｡
日直は出席番号の順番で回ってくるから､俺はこれから1年間この人とペアを組むことになる。
村瀬さんとは初めて話したけど､まさか最初の第一声で見た目を褒められるなんて思いもしなかった｡
｢言われたりしない？かっこいいね〜って｡｣
｢言われない…かな｡見ての通り俺､こんなだし､暗いし｡｣
高校に入学した日から今日までずっと､極力人と関わることを避けてきた｡
中学生の頃に仲良くしていた友人から裏切られたことをきっかけに､自分の心を守るために家族以外の人とは壁を作って過ごしていた。
｢前髪もう少し切ったら雰囲気変わるんじゃない？｣
｢前髪？でもいいや､このままで｡｣
｢友達､欲しくないの？｣
｢今までずっといなかったし､別に平気かな｡｣
｢そっか｡でも雰囲気変わったらもっとクラスに馴染めるかもよ？｣
｢…いいんだ､このままで｡｣
友達がいなくて寂しい思いをしたことがないと言ったら嘘になる。
でも後々自分が傷付くかもしれないと思うと､友達は俺には必要なかったんだ。
村瀬さんは一言で表すと､俺とは真逆の人。
休み時間はいつも人に囲まれていて､クラスの中心的存在だ。
そんな村瀬さんと俺が関わることなんて､きっと日直っていうこのシステムがなかったら永遠に訪れなかったんだろう。
｢もし目黒くんがよかったらなんだけどさ､｣
｢…？｣
｢私たち､友達にならない？｣
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作者名：夏目 | 作成日時：2024年2月8日 20時
