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kt side
「お、終わった...早かった...」
「やばかったね...」
コンサート開始から約3時間、夢のような時間は終わりを告げた。
裕翔とふたり、呆然として座席で退場案内を待ってる。
呆然としてるのはつまんなかったからじゃない。
むしろ楽しすぎて、このままずっと夢のような時間を過ごせたらとどれほど思ったことか。
そして何より。
「...ねえ、あの、指差して手振ってくれたの、」
「あ!伊野尾くんの!あれ絶対けいとだったよね...!?」
「だ、だよねっ!?
だって目合ったんだもん...!
ど、どうしよう、信じられない...」
ファンサをしないことで有名なあのいのちゃんが、まさかのファンサをしてくれた。
まず目が合った時点で信じられなかったのに、さらに指差してくれて、手も振ってくれて...!
もう奇跡としか言いようがない。
勘違いかもしれないけど、コンサート中くらい自意識過剰になってもいいよね。
そのまま呆然としてたら、いつの間にか退場案内がされてたみたいで慌てて荷物を持って裕翔のあとを追いかける。
どうしよう、もうこの思い出だけで一生健康に生きていけそう。
帰りの満員電車の中でもその興奮は収まらない。
「はぁ...夢みたいだ...」
「いい加減しつこい」
「明日から何もかも頑張れそう...」
「聞いてないし」
呆れたようにため息をつく裕翔の言葉すら耳に入らない。
そして俺が降りる駅のひとつ手前で裕翔と別れると、話し相手がいなくなって急に静かになった車内によって一気に現実に引き戻された。
明日から頑張れそうって言ったけどある意味頑張れないかも。
明日大学休みでよかった、って安心したのと同時にバイト入れてたことに気づいて絶望した。
どうしよう、明日絶対それどころじゃない。
なんて考えてたら、降りる駅についてることに気づいて慌てて飛び降りた。
ギリギリ乗り過ごさなかったからよかったものの、あと2秒気づくのが遅かったら乗り過ごしてた。
駅に降りた途端感じた寒さにまたしても現実を思い知らされる。
そうじゃん、今12月じゃん。
ホームにいる人はみんな暖かそうな格好をしてるのに、自分だけ薄いニット1枚で上着すら着てない。
慌てて持ってたコートを着て改札を抜けると、見慣れた駅前には少し雪が積もっていた。
「はぁぁ...」
興奮と絶望を含んだどうしようもない感情を吐き出したため息は、白かったけどすぐに寒い夜空へ消えていった。
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苺にゃん´`*(プロフ) - わたなべさん» 大丈夫ですよ! 無理せず、頑張ってください☆ 楽しみにしてます! (2018年2月19日 22時) (レス) id: 9828435108 (このIDを非表示/違反報告)
わたなべ(プロフ) - 苺にゃん´`*さん» ありがとうございます...!更新が死ぬほど遅いですが今後もよろしくお願いします(>_<) (2018年2月19日 22時) (レス) id: 5f3fb5e8f0 (このIDを非表示/違反報告)
苺にゃん´`*(プロフ) - とても素敵なお話です。あと面白いです! いのけと好きなので、読んでて幸せな気持ちになってます! (2018年2月19日 17時) (レス) id: 9828435108 (このIDを非表示/違反報告)
わたなべ(プロフ) - らなさん» わー!ありがとうございます(>_<)! (2018年2月13日 10時) (レス) id: 5f3fb5e8f0 (このIDを非表示/違反報告)
らな - ツイッター出てきました!ありがとうございま!m(__)m後フォームもさせていただきました! (2018年2月13日 3時) (レス) id: fc6c88d13e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わたなべ | 作成日時:2018年2月8日 3時