あなたのために (ページ1)

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「え、Aの好きな人って俺だったの？ごめん、俺はお前のこと仲の良い後輩としか見てなかったわ。今まで通りじゃダメ？」

人生初の告白は、少女漫画で見たような夢いっぱいのキラキラしたものなんかでは無くて、どのドラマや映画でも聞いたことのないようなセリフを、ジョンハン先輩は平然とした表情で吐き捨てた。

彼の問いかけに答えるには気持ちの整理と言葉をまとめる時間が必要だった。嫌だと駄々をこねれば、この関係は崩れる。でも、それでも。そんな葛藤を隠すように、口角を上げてみせた。

「ごめんなさい、気持ち悪いこと言って。私もジョンハン先輩とはこれからも仲良くしたいです」

「何だよ～、誰も気持ち悪いなんて言ってないだろ？嫌味か？( 笑 ) 明日いちごみるく奢らせてやるからな、覚悟しとけよ～！」

そして、居なくなってしまった後ろ姿をいつまでも眺める。手を伸ばせば届く距離にいたのに、心は届かなかった先輩。ヒロインが好きな人に告白する時の定番ネタとも言える屋上を選んでみたけれど、自分一人しかいない青春の場は何とも殺風景で虚しくなった。

本気で好きだった。大好きだった。

入学式の日に転んで足首を捻ってしまった私を助けてくれたジョンハン先輩。

「大丈夫？保健室までおぶってくから乗って」

綺麗な顔立ちからは想像出来ない広くて大きな背中に、驚きとときめきが反応したのを覚えている。関わりが欲しくて、先輩のいるバスケ部のマネージャーになった。二人で何度か出かけたりもした。勇気を出して花火大会にだって誘った。そうやって二人の世界を広げていくうちに、馬鹿な私はこの先に待っている展開に期待してしまったのだ。

「……うぅ………っ……」

フェンスにごつんと頭をぶつけてみても、一度溢れた涙は止まってはくれないし、先輩との思い出が消されるわけでも無かった。いっそ、忘れてしまえれば楽なのに。

「…このまま死んでしまいたい……」

「ぶふっ」

勢いよく振り向けば、名前も知らない男子が肩を震わせながら笑いを堪えていた。