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「あの、」
1つ1つ丁寧に言葉を紡いでいく。
間違えないように、噛まないように、
葛葉さんに届くように。
私の話を聞こうと彼の身体が離れていく。
小さく吹いていた夜風が私の追い風になった。
深呼吸をして、目を見つめて、伝える。
「私も好きです、よろしくお願いします!」
自分の声が響いているように聞こえて恥ずかしい。
顔が熱を帯びていく感覚が嫌というほど鮮明になった。
沈黙が流れる。
な、何か言ってほしい。
こうなったらもう
「えと、元気づけようとしただけなんすけど、その、なんかすいません、」でもいい。
欲を言えば、そんなこと言わないで欲しいけど。
しかし素直に自分の思いを口にすることが、こんなにすっきりすることだったとは。
1人で晴れ晴れとした気持ちになっていると、
溜息のような音と共に彼がしゃがみ込んだ。
「よかっ、たぁ……」
ここ最近の私は数字で人の機嫌をとっていて、
しかも人類全員に嫌われていると思っていたからか、
自然と心が浮かび上がっていく。
「俺、まじで絶対大事にします!!!ぃよっしゃぁぁあ!!」
長期間に渡る片想いが叶った少年みたいに、彼はガッツポーズを決めた。
その時。
彼の頭上に薄く霧がかかった。
数字が変わった。
[33]だ。
「あ、」
そう口にした時にはもう見えなくなっていた。
彼の頭上には、何もない。
ハートがない。数字がない。
「ん?」
彼に顔を覗き込まれ、脈が速くなる。
ついさっきまで私を悲しみの渦に突き飛ばしていた微笑みは、
今になってときめきに変わった。
数字が見えなくても大丈夫。
この人は私を好きな人だ。
いや、私と両想いの人だ。
私は幸せを全身に感じながら返事をした。
「もう見えないんですよね、好感度。」
──────────終──────────
[補足]
[33]は「長年温めていた夢が叶う」という意味があります。
(参考:https://spicomi.net/media/articles/2227)
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リト - エモすぎ(泣) (2022年4月27日 16時) (レス) @page13 id: 523ffe415f (このIDを非表示/違反報告)
紗衣(プロフ) - てんさん» ありがとうございます!!!!! (2022年3月6日 21時) (レス) id: d76054c63e (このIDを非表示/違反報告)
紗衣(プロフ) - 月姫さん» ありがとうございます!!ご期待に添えるよう頑張ります…!!! (2022年3月6日 21時) (レス) id: d76054c63e (このIDを非表示/違反報告)
てん - えもえもだ...!完結おめでとうございます! (2022年3月6日 20時) (レス) @page13 id: d1cc8b0d99 (このIDを非表示/違反報告)
月姫(プロフ) - 完結おめでとうございます!最高でした!次回作も期待させていただきます! (2022年3月6日 20時) (レス) @page14 id: 40fa930ed8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紗衣 | 作成日時:2022年3月5日 5時