検索窓
今日:2 hit、昨日:11 hit、合計:129,619 hit

ページ13

「あの、」


1つ1つ丁寧に言葉を紡いでいく。


間違えないように、噛まないように、


葛葉さんに届くように。


私の話を聞こうと彼の身体が離れていく。


小さく吹いていた夜風が私の追い風になった。





深呼吸をして、目を見つめて、伝える。


「私も好きです、よろしくお願いします!」


自分の声が響いているように聞こえて恥ずかしい。


顔が熱を帯びていく感覚が嫌というほど鮮明になった。





沈黙が流れる。


な、何か言ってほしい。


こうなったらもう


「えと、元気づけようとしただけなんすけど、その、なんかすいません、」でもいい。


欲を言えば、そんなこと言わないで欲しいけど。


しかし素直に自分の思いを口にすることが、こんなにすっきりすることだったとは。


1人で晴れ晴れとした気持ちになっていると、


溜息のような音と共に彼がしゃがみ込んだ。


「よかっ、たぁ……」



ここ最近の私は数字で人の機嫌をとっていて、


しかも人類全員に嫌われていると思っていたからか、


自然と心が浮かび上がっていく。


「俺、まじで絶対大事にします!!!ぃよっしゃぁぁあ!!」


長期間に渡る片想いが叶った少年みたいに、彼はガッツポーズを決めた。


その時。


彼の頭上に薄く霧がかかった。


数字が変わった。


[33]だ。


「あ、」


そう口にした時にはもう見えなくなっていた。


彼の頭上には、何もない。


ハートがない。数字がない。


「ん?」


彼に顔を覗き込まれ、脈が速くなる。


ついさっきまで私を悲しみの渦に突き飛ばしていた微笑みは、


今になってときめきに変わった。






数字が見えなくても大丈夫。


この人は私を好きな人だ。


いや、私と両想いの人だ。


私は幸せを全身に感じながら返事をした。






「もう見えないんですよね、好感度。」



──────────終──────────



[補足]
[33]は「長年温めていた夢が叶う」という意味があります。

(参考:https://spicomi.net/media/articles/2227)

あとがき(読んで下さると幸いです)→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (360 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
534人がお気に入り
設定タグ:2j3j , kzh   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

リト - エモすぎ(泣) (2022年4月27日 16時) (レス) @page13 id: 523ffe415f (このIDを非表示/違反報告)
紗衣(プロフ) - てんさん» ありがとうございます!!!!! (2022年3月6日 21時) (レス) id: d76054c63e (このIDを非表示/違反報告)
紗衣(プロフ) - 月姫さん» ありがとうございます!!ご期待に添えるよう頑張ります…!!! (2022年3月6日 21時) (レス) id: d76054c63e (このIDを非表示/違反報告)
てん - えもえもだ...!完結おめでとうございます! (2022年3月6日 20時) (レス) @page13 id: d1cc8b0d99 (このIDを非表示/違反報告)
月姫(プロフ) - 完結おめでとうございます!最高でした!次回作も期待させていただきます! (2022年3月6日 20時) (レス) @page14 id: 40fa930ed8 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:紗衣 | 作成日時:2022年3月5日 5時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。