榎本家の美女【あなたの番です】 (ページ33)

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第31話ページ33

泣こうと思って泣いたわけじゃないのに視界が涙で歪む。周りに人がいて彼を困らせてはダメだと一生懸命手で腕で涙を拭うけど止まらなくて。

その時、ぎゅっと抱き締められた。耳元で…無理しないで。と神谷さんはいうからそれに甘えるように泣いた。

『神谷さんありがとうございます…』

神「いえ…」

『………』

神「………」

泣き終わって彼にお礼を言ってから気付いたけど、私結構大胆な事してたんじゃないか…?神谷さんの手を使ってガードするとか…思い出すだけで神谷さんと顔が合わせづらい。とりあえず謝ろう

『「あの…」』

神「え…」

『あ…神谷さんお先にどうぞ』

神「あ、はい。祭り行きませんか?」

『そ、そうですねー』

そうだった…元々はお祭りに行くんだった。謝るのは後がいい。今は気まずい。

駅を出てみると、いろんな出店が広がっている。お面屋にりんご飴、金魚すくい。焼き鳥やお好み焼きのいい匂いもする

神「何から見ますか?」

『え、えっと…射的とか?』

神「ﾌｯ…『え?』いやぁ…案外子供っぽい所あるんだなと」

『なっ?!…ダメですか』

周りから冷めてるだのと言われがちだけど、案外こういう行事事が好きな私は大人気ないと思うけど、失笑する神谷さんを横目にむっとしながらも射的屋へ足を向ける

神「子供っぽいと言ったこと怒ってるんですか?」

『怒ってません…!おじさん１回お願いします』

「はいよ～!よーく狙ってね～」

『………えいっ』

欲しいぬいぐるみにパコンｯと弾は当たったけど、物は落ちなかった。く、悔しい…。おじさん残念だね～と残念賞の某キャンディーを貰う。

神「……１回お願いします」

『えっ』

「おっ!兄ちゃんもやるかい?!彼女の為にやるなんて青春だねぇ～!よーく狙ってね～」

神「あれでいいんですか?」

『へ?あっ、はい…?』

パコンｯコロンｯと私の欲しかったぬいぐるみは倒れ落ちた。それからも次々に神谷さんは景品を倒す。5回中3弾も落とした。

おじさんも驚きを隠せない様子だけど、ベルをカランカランｯと鳴らす

「兄ちゃんすごいねぇ～!センスあるね!!お嬢ちゃん良かったね!いい彼氏じゃないの～」

『…彼氏じゃないんですけど…』

神「…どうぞ」

『ありがとうございます』

神谷さんは採れた景品を私へプレゼントしてくれた。ぬいぐるみに犬型の時計、それにポッキー。私の好きなものばかり。

…それにしても彼氏だと言われてる事を否定しない神谷さんは店主を相手にしていないのかな