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細い莉央の髪を指に絡めて、整った髪を崩す。
「莉央?」
てっきり、うっさいなあ放っとけ、なんて反発してくるもんだと思ってたから、
黙る莉央を不思議に思って呼び掛ける。
「何?」
テレビに視線を向けながら、私の発した言葉に気にも留めていない様子。
やめろ、とは言わないんだ、と心の中で思いながら、
私を見てくれない莉央の目をじっと見つめる。
お姉ちゃんになったみたいで、昔から莉央にちょっかいをかけるのが好きだった。
嫌がる反応が昔から面白くて。
それなのに、今日はなんだか莉央の様子がいつもと違う。
「最近忙しい?」
久しぶりに会った莉央。
そのせいかあまり構ってくれない事に、寂しさが襲う。
泰斗程ではないけど、昔は毎日のように会っていたから、半年の時間が空いただけなのに、とても懐かしく感じる。
「いや、」
「言いたくなかったらいいの、
こうやって話せる時間が出来て、それに泰斗もいて、今すごく楽しい、ふふ」
莉央は、あまり自分の事を話したがらない。
私に知られたくないだけかもしれないけれど。
会話の始まりはいつも私からだったと、ふと気付く。
「‥大人になったね」
指に絡めた莉央の髪を解いて、頭を撫でる。
赤く染めた髪も、メガネからカラーコンタクトにしたとこも、個性的な服装も、
幼い頃の莉央からは想像もつかない。
泣き虫だった莉央が、会う度に成長している事に、嬉しい気持ちとは反面、
頼りにしてくれなくなった事が少し寂しい。
「‥あ、ジュース無くなっちゃったね、
何か飲みたいのある?」
「俺、もうそろそろ帰、」
「適当に買ってくるからっ!絶対帰っちゃダメだからね、帰ったらもう一生口聞かないんだからねっ」
莉央が何を言おうとしたのかが分かって、
途中で口を挟んで、莉央を脅す。
何この低レベルな条件、こんなの別に莉央にとったら痛くも痒くもないに違いないのに。
心の中で失笑して、財布を持って家を出る。
時刻は0時過ぎ。
星の見えない曇った夜空は、まるで私の心を映し出しているよう。
なんでこんなに幸せなのに、涙が出てくるんだろう。
視界が滲んで、溜まった涙が溢れ出ないよう上を向いて歩く。
呼び出した時の迷惑そうな表情をした莉央と、
無理矢理家に引きずり込んだ泰斗の怠そうな表情が、
頭から離れなくて。
ゆっくりと歩を進めて、時間を潰した。
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ココア - 最初から最後まで見させていただきました!素敵な作品でした!読んでいる途中で涙が出てきました(´;ω;`)私が好きなすとぷりの方々でさらに(´;ω;`)これからも素敵な作品を作ってください!応援しています! (2018年4月24日 19時) (レス) id: e2c2ecdd59 (このIDを非表示/違反報告)
綾(プロフ) - 琥 珀 く ん 。さん» コメントありがとうございます。琥珀くん。さんにとっての“幸せ”の在り方を良い意味で変えることができたならとても嬉しいです(´。・-・。) 最後まで読んで下さったこと、心から感謝致します。ありがとうございました( ∩'-'⊂ ) (2018年4月10日 20時) (レス) id: 31ad836b06 (このIDを非表示/違反報告)
綾(プロフ) - 夜菜さん» “虐め”や“嫌がらせ”って、孤独で寂しくて、自分の存在を否定されているように感じて本当に辛いですよね。それを乗り越えるお手伝いが出来た事、本当に嬉しく思います。と同時に、その経験を伝えてくださった事、心から感謝致します。最後まで有難うございました。 (2018年4月10日 20時) (レス) id: 31ad836b06 (このIDを非表示/違反報告)
綾(プロフ) - 紗菜さん» コメントありがとうございます。大小関係なく、幸せを感じられる心を持った方って素敵ですよね(^^)修正をしております、宜しければラストがどんな風になるか見届けて下さると嬉しいです。最後まで読んで下さり本当に有難うございました。 (2018年4月10日 19時) (レス) id: 31ad836b06 (このIDを非表示/違反報告)
夜菜 - 最初から最後まで読ませていただきました。もう涙が止まりません。今生きていることって幸せな事だと感じさせられました。私は今までいじめを受けてきてもう耐えきれずに死のうと考えてた事が、今では気持ちがすっきりして生きていてよかったと思ってます。 (2018年4月7日 1時) (レス) id: 3ca2660054 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綾 | 作成日時:2017年5月12日 20時